しゃび

朝が来るのしゃびのレビュー・感想・評価

朝が来る(2020年製作の映画)
5.0
ずっとじんわり泣きながら観てた。

河瀨監督の映し出す自然は、決して優しくなくて、時には人を飲み込んでしまうのではないかというパワーがある。

でも、そのパワーこそが生命なのであって、そういう生命の力の中で僕たちは活きているのだと実感する。

とても重たい話だけど、社会問題として描くのではなく、あくまで個人の物語として描く。社会は人の集まりのことだ。だから、社会問題とは社会に帰属しているのではなく、個人にまつわる課題なのだ。


フィクションとドキュメンタリーの差はとても曖昧で、ほとんどないと言ってもいい。

どちらにしても、なにがしか恣意的にならざるを得ないし、一方でアンコントローラブルな何かが必ず入り込む。

河瀨監督は、そのあいまいさをあいまいなままに、映しこむ。そこに線など引く必要がない。


永作博美も井浦新ももう見違えるような演技をしている。いったいどんな魔法をかけたのだろうと思う。自然体ではなく、自然を取り戻して演じているように見える。

蒔田彩珠は初めて観たのだけど、河瀨映画における尾野 真千子を継ぐものなのではないかという興奮があった。


人は秀でていたり、好人物だから愛されるのではなく、本来愛くるしいものなのだ。
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