Arbuth

カセットテープ・ダイアリーズのArbuthのレビュー・感想・評価

4.5
二度目のギンレイホール鑑賞作品。
やっぱり音楽が主役の映画は映画館で観ると良いですね。音の迫力◎

主人公のジャレド(少し山崎まさよし似)はイギリスの片田舎に住むパキスタン移民。二世なので完璧なブリティッシュ・イングリッシュを話すけれども、周囲のイギリス人からは差別を受ける毎日。
パキスタンから国を捨てて移住してきた父親も、パキスタン的価値観のまま生きていて自分や息子を“イギリス人“とは認めていない。
アングロ・サクソン人の幼馴染もいてイギリス的価値観に染まっているジャレドは自分のアイデンティティについて日々鬱屈した思いを抱えている。

そんな中入学した高校で出会った一本のカセットテープ。中身はブルース・“ザ・ボス“・スプリングスティーン。自分の人生全てを代弁してくれてると感じるような衝撃的な出会い。もう今までと同じ自分じゃいられない。拡がる世界。

自分は世代的にMDだったけど、高校時代に友達にハイスタのMDを紹介された時の衝撃を覚えている。気持ちが分かるというか、懐かしさを感じた。自分は(多分大多数の人がそうであるように)ギターを弾いたりバンドを組んだりという風に傾いたけど、好きなミュージシャンの評論を書くという“好き”の表現方法もあるんだなぁ、と新鮮な気持ちがあった。ちょっとタイプは違うけど、「あの頃ペニー・レインと」を思い出した。あれもすごく好きな映画。

あとちょっと「イエスタデイ」にも似てたかなー。多分主人公が南アジア系で実在のミュージシャンを扱っているからってだけだけど。

色々と発見もある映画でした。
サッチャーって本当に嫌われてたんだなー、とか。
ブルース・スプリングスティーンって世代じゃないし”Born to Run”と”Born in the USA”ぐらいしか知らなかったけど、良い曲多いなーというのも素敵な発見。
あと80年代のカルチャーって良いですねー。ファッション、髪型、メイク、どれも他の年代と比べると尖ってて。今見てもなんとなく未来的というか。

ストーリーはちょっと出来過ぎというか、こんな良い人ばっかりな訳ないよ、とは思うけど、でも映画の中くらいこれくらいファンタジーでも良いよね。たまには明るい話が観たいんだ僕は。
空港の入国審査のシーンとかとてもハッピーな気持ちになったよ。
ラストのスピーチも素晴らしい。

エンドロールの実際の写真も素敵な笑顔でした。
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