回想シーンでご飯3杯いける

静かな雨の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

静かな雨(2020年製作の映画)
3.2
「走れ、絶望に追いつかれない速さで」と「四月の永い夢」で、静かながら、その中に秘められた情熱を感じさせる作風に魅了された中川龍太郎監督。今回も基本は同じ路線だ。

大学の研究室で働く男と、たい焼き屋を営む女の物語。たい焼き屋の女は事故により新しい記憶を短時間しか留めておけない障害を持つようになる。分かりやすく言えば「メメント」状態。思い出を積み重ねられない2人の苦悩と決意を描く。仲野太賀(太賀)の無表情だけど恋人を支えようとする姿がとても良い。

ところで、僕の知る限り、中川作品としては3本連続で古風な仕事に就く人が登場するのだが(今回はたい焼き屋なので、伝統産業とまではいかないけど)、中川監督の若さを考えると優等生的に思え、どうも不自然さを感じてしまう。登場人物もやや真面目過ぎる傾向があり、もう少しユーモアや、人間の邪悪な部分、怠惰な部分も描いた方が、作品が豊かになるように思うのだが。