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ミッドウェイのohassyのレビュー・感想・評価

ミッドウェイ(2019年製作の映画)
3.5
数ある戦争映画の中で、比較的落ち着いた演出とロジックを展開する本作は、スペクタクル映画の旗手であったエメリッヒのクリエイティブも発揮された、思わぬ良作であった。

個人的にほとんど知識もなく、ポリティカルな思想も無い第二次大戦モノは、映画の中身や思想に引っ張られがちなのだけれど、比較的どちらにも肩入れすることなく最後まで鑑賞することができた。
もちろん場面ごとに、飛行機乗りのピンチや勇敢な姿、情報将校の知略、日本将校たちの苦悩や覚悟など、感情を揺さぶられることはあったけれど、それは映画として優れているということだ。
多くの人が比べるであろう「例の映画」がいろんな意味で大きな存在となり、本作をより「フラットな描写」と言わしめている部分はあるだろうけれど。

ミッドウェイ海戦は大戦の勝敗を分けた一戦であったとはよく聞く話ではあるけれど、そこに至るまでの日本の優勢ぶり、裏を返せばアメリカの劣勢ぶりがこれほどのこととはイメージしていなかった。
ともすれば真珠湾攻撃はアメリカが戦争を始める口実として「させた」などという説もあるくらいで、最初から最後まで日本軍は去勢を張っていただけと思っていたのだけれど、実際には真珠湾で大打撃を被ったアメリカ海軍は空母の数から何から日本海軍に劣っていて、まともに戦ったら歯が立たないと日本軍を心底恐れていたという。
真珠湾攻撃の経験から情報を大切に考え、日本を調べ抜いたことでなんとか海戦に勝利したということだ。

様々なシーンが断片的に繋がりながらストーリーが進んでゆく形は記録映画さながらではあるが、メジャースタジオの超ビッグバジェットからしたら低予算(だけど1億ドル)のインディペンデント映画として申し分のないクオリティ。
長い時間をかけたリサーチと、エメリッヒの歴史に対する誠実な取り組みによって、太平洋戦争に対しての興味を大きくした。

一方でエンタメ作品としてもちゃんと面白い。
ウディ・ハレルソンをはじめとした名優たちにも支えられ、見応えのある戦争ドラマに仕上がっていると思う。
やはり日本人としては、日本側の描写をもっとたくさん見たいなと思ったけれど。
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