知り合いが配給会社にいる案件&「ジュディ 虹の彼方に」での好演が印象に残っていたジェシー・バックリー主演ということで鑑賞。
結論から言うと「非常に惜しい!」って感じの出来。
「出獄したダメなヤンママの夢追いストーリー」というアウトラインにはフックを感じるし、「グラスゴーのカントリー・シンガー」ってのもなかなか興をそそる設定だと思うんですがね。
軸としてはジェシー演じる主人公とその母親、そして姉弟の2人の子供を巡るファミリードラマで、そこのぎこちなくままならない関係の描写は、そこそこ堅実にこなせてると思います。
ただですねぇ、出獄後いきなり青姦かます彼氏だのお人好しな隣人のおばさんだの夢をバックアップしてくれるパート先雇い主のセレブ妻だの唯一の悪役的な役回りのその旦那だのBBCのカリスマDJだのといったサブキャラ陣の描き込みが、どうにも薄くてコク不足というか。
それとも関連するけど、なんかねードラマの強弱というかメリハリの付け方が若干中途半端な気がするんだよなぁ...
要はあえて淡々としたトーンを貫いてリアル路線でいくか、それとも起伏のある演出で劇的に仕上げるか、まあこの映画の場合、設定がフィクショナルだしそれなりに事件めいたものも起こるので後者でいいんだと思うけど、なーんかそこが盛り上がり切れてなくて歯がゆい訳よ。
やりようによっては例えば「レスラー」みたいな名作たり得たんじゃない?とかね。途中「竜二」みたいになるのか?ってドキドキしたりもしたし。
あと主人公・ローズが「あたいがやってるのはカントリー&ウエスタンじゃなくてカントリー!」ってこだわりを連呼すんだけど、そこらの音楽周りのエピソードもあんまピンとこなかったかな?
つーか、聴く限り彼女がやってんの、カントリー・ロックとかサザン・ロックとか、そのへんのカテゴリーが妥当なのでは?
ま、音楽ジャンルのカテゴライズなんて多分に恣意的なんで別にいいけど、「ナッシュビル行ってTake A Chance!」みたいなのって未だに有効なんスかね?そこらの考証もちょい怪しいってか、微妙に古い気もしました。
とはいえ、この手のブルーズベースのアーシーなサウンドは個人的には好みなので聴いてて単純に心地良かったし、何より歌手あがりだけあってジェシーの歌唱もさすがに堂々たるもの。
もうちょい抑制した方がそれこそメリハリ効いたんじゃないかとも思うけど、全篇で力の入った熱唱が堪能できるのは、この作品の大きなアドバンテージか、と。
着地はビター方面に振ってくれた方が俺はグッとくるけど、そこはおそらく好みの問題でこっちがいいと思う人も多いでしょう。