とむ

犬王のとむのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
3.8
トップカットで実写映画と見紛うほどの画作りに一瞬戸惑い、その認識のままタイトルバックまで駆け巡った。


室町時代の日本でミュージカルを、それもアニメーションでやるっていう発想がブッ飛んでて最高なんだけど、
そんな中でもベストアクトはやっぱりアヴちゃんa.k.a女王蜂。
歌唱のインパクトは言わずもがな、あの独特の声色がキャラクターに合う合う!!

犬王は、生まれながらにして妖怪・物怪の類だと見下され、むしろ畏れられているんだけど、それでもあっけらかんと駆け回り傾(かぶ)く姿は格好良くすらあり…


湯浅さんのアニメーションは、
少し外連味というかケミカルな映像表現が爆発するのが堪んなくて観てるのもあるんだけど、とにかく"厭"な表現から逃げていないのがすごいんですよね。
とあるシーンでかなりグロテスクな表現があったりもするんですが、真正面から叩きつけてくるので「うわぁ」感すら感じさせない凄みがある。


ただ、頭から30分程度はもうめちゃくちゃに面白くて頭の中が「やばい!面白い!やばい!面白い!」に埋め尽くされていたけど、
後半になるにつれて少しだけ苦言的な物が増えてきた。
犬王と友魚(友有)は、これまでに無い歌と舞で聴衆を魅了する(劇中ではそれをロック的な楽曲を当てているんだけど、「映画を見てる人たちも当時の人らと同じ感覚を味わってほしい」って事だと思うからこれは良かったと思う)んだけど、
この歌が歌詞以外毎回同じメロディなんすよね。
せっかくアヴちゃんも森山未來も格好良い歌声なんだから、色々バリエーション持たせて欲しかった。

あと、これはこちらの勉強不足も原因なのでそこを突っ込まれると痛いですが、
歌の歌詞とかを縦組みで出してくれるとより理解度が深まって楽しめたかなぁと思いました。


そして一番は、終盤で犬王のある部分が露わになるんですケド、あのデザインは正直もっとインパクトのあるものを期待しちゃってました。
それまでの過程があるから美醜は問わないけど、思ったよりも"普通"なんすよね…


これは手塚治虫の「どろろ」でもうっすら感じていた事だけど、犬王は何を失い、何を得たんだろう。
そして得たものは彼が本当に得たかった物なのかな。
とむ

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