けんたろう

犬王のけんたろうのレビュー・感想・評価

犬王(2021年製作の映画)
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平家物語の物語り。


予てより楽しみにしてゐた一作。

嗚呼、凄い表現!
突如始まる友有の、鳥渡清志郎を感ぜしむる愉快で刺激的な驚愕のロツク。然うして待ちに待つた犬王の、幾つかのミユジシヤンを想起せしむる歌と踊りの複合せし演舞。壮美なる画と音楽とに依りて、ときに烈しく、ときに繊細に描かるゝ其の歌唱と舞ひとには、只々感動。下らぬ理屈などを超越した表現! 此れだ!

──たゞ、ドラマは浅い。
先づ、友有の谷一への恩義である。友一の変化以降、彼れの谷一を慕ふシインは一つもない。だのに、行成り二人の別れが描かれるものだから、此の最後にシインには、取つて附けたやうな印象が有る。迚も違和感は拭へない。
加へて、犬王と友有との友情である。抑〻、よくアニメに有るやうなあざといイケメンボイスがノイズと成つて、話しが中々這入つてこない。そして其の煩雑なるまゝに終はりを迎へる為め、最後が然ほど綺麗でない。
更に、犬王と其の父の確執の結末である。秘密が明らかに成るまでは冗長。其の仕舞ひ方は雑。とにかく快くない。

何んとも不快なる映画。本作のウリの部分以外は、迚も面白くない。成るほど其のウリの部分を観る為めに、劇場へ向かうたのだ。其れさへ観られゝば、其れで好からう。然し、──面白くなし。