いしはらしんすけ

生きるのいしはらしんすけのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
3.8
英国リメイク版を観る前にオリジナルを、ということで言わずと知れた黒澤の名作を初見。

「羅生門」があって「白痴」からのこれでその次が「七人の侍」ってまさに風雲昇り竜な時期ですな。

「羅生門」にも通じる時制を組み替えた叙述のスタイリッシュさは今もってフレッシュな切れ味を顕現。

さらに役所に代表される行政組織の非人道性を活写したストーリー自体が現代社会でもまんまリアリティありまくりで、だからこそリメイクもされるんでしょうけど。序盤の担当課たらい回しのくだりなんかはコロナ禍での申請不備ループと相似だし、それこそ英国で言うなら「わたしは、ダニエル・ブレイク」でも似たような展開あったし。

中盤の若い女子社員を連れ回すとこなんか完全にパパ活じゃん!などなど70年も前の作品なのにほぼ改変なしで通じそうなのはやはり驚異的。これが名作の普遍性か。

勿論主役の志村喬による名演も目を惹きつけずにおれない、日本映画が誇るレガシーの一つか、と。