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愛なき森で叫べのウツボのレビュー・感想・評価

愛なき森で叫べ(2019年製作の映画)
2.3
元ネタに釣られてやったきた、初めて園子温に触れる人向けに作風と趣味を余すことなくアピールしている、さながら園子温スターターキットのような作品ですね。

事件を元ネタにすると聞き予め事件に関するルポを読んだりしたのですが、この作品を楽しむという観点からすれば読む前・詳しく知る前に見たほうが良いかなあと思います。
(なぜなら印象が強烈すぎて、どーーしても元ネタを気にしたり引っ張られてしまうからですね……)

そして元ネタを知っていなくても、園子温経験者だったらなんとも言えない物足りなさはあったんじゃないかなあと。
多分実際の主犯をカリスマとして描きすぎないように、程よくポップにして陰惨になりすぎないようにしなきゃいけないみたいなノルマとかがあり、それを補うための園子温過去作品再構築劇場を繰り広げたのかなあと。想像ですけどね。
でも再構築したからこそ過去から受け継がれている監督の悪癖が顔を覗かせてオイ!!って気持ちにさせてくるというか……。
相変わらずだな…みたいな……。
経験者からしたら結局過去の総集編だから途中で飽きちゃうんですよねえ……。

また、元ネタを知っている状態で観た時の印象ですが、上手く調理出来ているかと問われたら、いやあもっと上手くやれただろ…と思わざるを得ません。
映画を撮るということにして共同生活へと誘導するのはポップにもなるしなかなか悪くないなとは思いましたが、
前述した通りの事情もあったと思うのでどうしようもないかもしれませんが、事件の要たる洗脳パートも殺しパートも冷たい熱帯魚の方が良かったっていうのはな〜……。

個人的に元ネタを一番強く感じたのは(ていうか直球でしたが)死体の処理の方法だったんですが、その時の絵面が冷たい熱帯魚のときと大差ないんですよね。
なんならあっちの方が過激でしたから、今回パワーダウン感を覚えてガッカリしたのは否めません……。
あ〜焼き直しを見ている…と思わせられてしまうのが辛い……。
しかもあの処理方法って別荘よりも遺体の隠蔽を図るのが難しい自宅でやる方が必然性が高いのに…なんなの…?みたいな気持ちにすらなっちゃって……。

そしてこれはもう素直にマイナス点だなと思ったのがラストシーンで、正直今年観た中で一番の興醒めでした。
これ面白いと思って入れたんですか?まあそうなんですよね?
いや〜〜……うーーーん……。
しかも最初の方で言っていた監督の悪癖が炸裂していて正直キツかったなあ……。
どんでん返しもなんだか色々履き違えているしこのラストは好きじゃないですね……。
つまらなくはないですがあまり趣味ではなかった感じでした。


あ、あとトリアー監督大好きなんだなあってポイントが散見されて、なんだか監督が健気で可愛げがあるような、じゃあこれ止めてトリアー監督の映画見てくるね…とさせられるような感じでそこはシュールです。
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