まりぃくりすてぃ

死刑台のエレベーターのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

死刑台のエレベーター(1958年製作の映画)
3.3
手に汗握らなかった。
手際よいモーリス・ロネは、犯行のところまでが作品内モテ期だった。閉じ込められてからの彼は、冷静さを失いかけるでもなく(それはそれで精鋭兵士上がりらしくはあるけど)最低限マストな必死さを表現してない。だから、せっかく解放っていうところまで来ても「このエレベーター、一晩ほど遅れましてのご到着となります。ご迷惑をおかけしました。申し訳ありません。まもなく一階ロビーに到着いたします」と新宿駅迫った十数分遅れのJR中央線車両内みたく“緊急停車なんていつものことよ、と車掌も乗客もみんな小慣れの中にいるばかり”感。

若い男女もドイツ夫婦も、わざと変キャラに? 特に車を眺め始めてからの若男子(ジョルジュ・プージュリー)の進みぶりと「イヤよ。ダメー」と何でも受け入れちゃう女子(ヨリ・ベルダン)のアフォさが楽しくはあるけど、“非サスペンス”へと脇役全員でピクニック邁進。「全員死刑」って私なんかがいきりたつぐらいに個々の言動がやっぱりどうにも漫画的すぎて、誰への感情移入もひたすらムズかった。
イヤミスだからしょうがないけど、主役にもね。
うん、ジャンヌ・モローの顔は昔から私、ウ~ンです。何だかホラー映画タイトルっぽい姓名もふくめて、私からの好かれポイント一つもない一流女優さん。
それはどうでもいいとして、彼女に「独白」ばっかりさせちゃいけない。この手法は絶対バツ。もっとちゃんと、表情や仕草や小道具や大道具そのほか映像全体で心の内(嫉妬・不安・焦り・失望など)を語りましょうね。

それなりに張り切ったマイルスも、べつだんこの映画を救っちゃいない。トランペットって(ザラザラのベロでいきなり触ってくるような黒すぎ感ある上に)キンキンして耳的に苦手で私、大好物のコルトレーンをマイルスと別れて以後の盤しか聴かない人だから、ここでのマイルス先生を神とまでは評価しない。もちろん全然悪くなく、いい。
映画も、ストーリーそのものはよかった。