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スノーマンのdm10foreverのレビュー・感想・評価

スノーマン(2015年製作の映画)
3.8
【粉雪】

久しぶりのHOPPY HAPPY THEATER。

冒頭。可愛らしい少年が一人で雪だるまを作って遊んでいる。
その雪だるまは3段重ねの大掛かりなもので、完成すれば少年の背丈はゆうに超えてしまう。
案の定、最後の一段が中々積み上げられずに悪戦苦闘する少年。
ふと窓から家の中を覗き込むと、そこには暖炉の前でくつろぐお父さんがいた。
何とか雪だるまを完成させたい少年はお父さんに手伝ってもらおうと、必死に外からアピールを試みる。
でもお父さんはなかなか気付いてくれない。
(こうなったら・・・)
少年は大きめの雪玉を握りしめ、窓ガラスに向かって思いっきり雪玉を放り投げた。
≪ガッシャン!≫
粉々に砕け散る窓ガラス。
そして窓の向こうのお父さんはようやくゆっくりと立ち上がり・・・・。

まるで粉雪のように手のひらの上で一瞬に消えていく幻。
幸せだった日々の暖かい感触が、尚更少年の心を凍えさせる。

優しくて頼もしかったお父さんのいないクリスマス。
まるで残酷な現実を拒否するかのように、完成間近だった雪だるまを滅茶苦茶に破壊する少年。

・・・切なすぎる。

昔、まだとんねるずが「歌手」だった頃。
彼らのアルバムの中の一曲に「母子家庭のバラード」っていう曲があったのね。
たぶん今でもYoutubeとかで聴けると思うけど、その曲は貴さんの亡くなったお父さんに向けた曲で、歌詞と歌い方がとにかく切なくて、毎回聴くたびに涙がボロボロとこぼれてしまって大変だった。
当時、自分はまだ高校生でウォークマンで色んな曲を聴きながら通学してたんだけど、この曲の順番が来たら飛ばしちゃうこともあったくらい。
だって急にバスの中で泣き出したら危ない人だしね(笑)

あの頃はまだまだ僕も子供だったけど、そんな自分にも家族が出来て、自分の事を「お父さん」と呼ぶ子供たちが生まれて、「自分にとっての父」と「子供たちにとって父である自分」という両方の意味が段々とわかるようになってきた。
今年、父が亡くなったけど、そういった意味ではいろんな角度から色んなことをしみじみと考える時間も多かったような気がする。

粉雪は手のひらで消えてしまうかもしれないけど、温かい思い出は永遠に残り続けるんだよね。

切ないお話ではあるんだけど、ラストシーンの「ほっこり」も含めて、暖かい余韻が残る一本でした。
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