こたつむり

ザ・ハントのこたつむりのレビュー・感想・評価

ザ・ハント(2020年製作の映画)
3.9
♪ 遊びはここで終わりにしようぜ
  息の根 止めて Braking down

映画も人生も先が読めないから面白いのです。
今日と同じ明日、明日と同じ明後日…そんな日々を過ごすのはとても大切ですが、それだけでは飽きてしまうのも事実。何かしらの変化がなければ、老衰よりも先に退屈で死んでしまうことでしょう。

そう考えれば本作は良作。
禁断の行為である“人間狩り”を描いた物語。
何故、狩るのか、狩られるのか。
そして、誰が生き残るのか。

序盤から先が読めない展開に胸は高鳴るばかり。特に主人公に見える人たちが散っていくのは…まるで永井豪先生のような容赦の無さ。良いですねえ。最初から主人公と分かっていたら「こいつ、死なないな」って思っちゃいますからね。

それに、尺は短めの90分。
やはりテンポが良いと自然と脳汁が出ます。
しかも、頭の回転が速い登場人物は大好物。リスクと可能性を計りながら選択肢を消していく様は、最高に格好良いです。これがサバイバルには大切な姿勢ですね。

だから、途中で足元が揺らいでも。
また、政治的な主張が垣間見えたとしても。
そんなことは重要ではありません。誰が生き残るのか、殺されるのか。それを描くための“道具”だと割り切れば良いのです。風向きによって立ち位置を変える…それは生き残るための知恵なのです。

また、爽快さと笑いを忘れない姿勢も良いですね。というか、本作で笑えてしまう自分が少し怖いのですが、基本的に他人の不幸は蜜の味と申しますからね。窓の向こう側で戦場を楽しむ富裕層の如く、腐った魂で臨めば本作もコメディの一種。そもそも、ブタの存在からして…ねえ。

まあ、そんなわけで。
登場人物に共感したいとか、勧善懲悪を求めるとか。そんな温さとは無縁の物語。正直なところ、全貌が見えた終盤は少し飽きるかもしれませんが、着地するためには必要な部分。この辺りは生温かい眼で見守りたいところです。

それに、前半で脳汁を垂れ流しておけば。
その液体をすくってはこぼしている内にサクッと終わっていると思います。自分の周りが赤黒くなっているかもしれませんが…下地が緑ならば綺麗ですよ。乾杯。
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