バス行っちゃった

シャン・チー/テン・リングスの伝説のバス行っちゃったのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

ついにガリアンソードに代わる新たなのびーる剣系武器が現れましたな。

痛みの伝わるジャッキー的香港カンフーアクションもあれば、映像で魅せる武侠アクションもあって、大予算でもって中国語圏のアクションを丁寧に再現しようという制作側の意気が感じられたし、それがちゃんと楽しかったのだから、言うことなんてないっちゃない。

ただ、でも、多様性ということでアメリカにいる時からアジア系の人物が多く配されていたのだろうけれども、そういう形での配慮は新たな不公平感による分断の元にもなり得る結構危険な気遣いのように個人的には思えるし、どうせ舞台が中国に移れば自然と画面はアジア系がメインになるのだから、せめて序盤はアジア系を含め多様な人々が配置されている方がポリポリコレコレした目的にはかなうのではないかなという変な心配が少しだけ。

あとはまあ、あえてそういう方向でシム・リウがキャスティングされたのだろうし、彼もそれにきちんと応えたが故のことだとは思うのだけれども、やっぱり個人的には主人公に華のようなものが足りてないように感じられてしまって、主人公がもともと持つ優しさから来る内面の魅力に加えて物語で人物が厚くなっていくことで醸し出されていった部分はたしかにあったものの、それでも過去においてすでに大きな転機を乗り越えてきている主人公だからなのか、この物語内では劇的な成長や変化を遂げることがなく、それでも同じように人物像の変化がそれほど大きくなかったブラックウィドウが不変であることによって主人公として際立っていたこととは対照的に、物語の最初に感じた主人公としての地味さが大きくは更新されなかったがために対角線のトニー・レオンの色気を上回る存在にはなり得なかったという印象。まあ単純に自分が枯れ気味のイケオジにクソ弱いというだけのことではあるのだけれども。

これからシリーズを重ねていくことで主人公のキャラの弱さも変わっていくとは思うけど、少なくともこの一作だけでは、キャプテン・アメリカ一作目のような主人公に対する高揚感はまだ得られなかった。いつかこんなことを書いた自分を許せなくなる日が来るといいし、来て欲しいす。