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巴里の屋根の下のefnのレビュー・感想・評価

巴里の屋根の下(1930年製作の映画)
4.0
 喧騒の中では会話は通じない、それをトーキーで実現する勇気。スリもケンカも口論さえも市民の合唱、ダンスホールの演奏がかき消していく。しかし、それが内容の無意味を示すのではなく、むしろ痴話喧嘩や友情のあり方を観客に喚起させるようなつくりになっている。決闘を汽笛にかき消させて不安を誘う演出は絶品。
 どのグループショットもアクセントを欠かさず、他にも先頭の男が頭一つ上げたり、一人だけ離れたりといった構図になっている。冒頭の巴里の屋根、煙突のパンから一転して合唱隊の群衆、再度ティルトで昇りながら観客の姿を映し出すシーンはとてもよかった。

 4k修復ということで、昔観たVHSよりは随分と綺麗になってはいるが、輪郭をハッキリとさせた代償にボケ味やフィルムのグレイが消されてしまっている。女の子にかかった白いベールや窓の反射光は白トビとは別なはずなのだが、どうしてこうなったのだろう。
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