るる

ハスラーズのるるのネタバレレビュー・内容・結末

ハスラーズ(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

2月、レディースデー、都市部の昼間だったからか、仕事の合間に寄ったらしい、パリッとした見た目のおじさん客もたくさん、アカデミー賞発表後の、静かな話題作、って感じの入りだった。

エンドロール最高だったな、女性客多めなことが想定されたアナウンス、誰のための映画なのかが明確でアガッたので、女性限定上映とか夜職の女性に向けた招待上映会とか色々やってみてほしいと思った、必要としているひとに確実に届いてほしい映画。。

これがアカデミー賞に引っかからないなんて嘘でしょう? なにこの完成度、隙のなさ。ふかふかのマシュマロを口いっぱいに頬張ったような充足感…この題材に必要な物事は全てあったし、足りないものはなにひとつなかった。と思わされた。

罪悪感を語らせたり、倫理的に気になる芽がきちんと潰されていたので、見やすかった。痛快にはしない、でも決してスキャンダラスではない、友情の話として、めちゃくちゃ心配りして作られていたと思う、すごかった。

あえて言うなら、彼女たちが使ったようなレイプドラッグを、女に使う男について描くことで、男がやっていることを女もやっているだけ、という地獄のような側面も見せてほしかった。

JFLのモデルになった女性が告訴中ということで、ちょっと引っ掛かりも。

冒頭、コンスタンス・ウーの背を追いかけるカメラ、凄かったな、あの列に、並ばされる感覚、並んでいる感覚…
終盤、自宅から消えた子供を探すあたり、同じくカメラが彼女の背中を追うんだけど、また違った効果となっていた。

ギャルの友情、最強だなって思った。羨ましささえ感じた。

いわゆる陰キャの部類だったけど、中学生のときにコヨーテアグリーを見てカッコいいー!とテンション上げていた女の子だったので、大人になってからコレ見れて良かったなって。

20代前半から後半にかけて、水商売、性風俗への忌避感や嫌悪があって、これは性風俗従事者への蔑視なのだろうかと悶々と自問自答するフェイズがあって、いや性産業自体は人間にとって必要なもので、ダメなのは労働者から搾取するダメな構造であって、ホモソ文化に基いて性風俗関係者を差別するバカや性を軽視するバカこそが嫌いなんだ、と、ある程度、整理できた段階で見られたので良かったと思う。その上で、日本で風俗では働きたくない、恐怖心がすごいある。

わりとどんよりした気分にもなったんだけど、アガる箇所はちゃんとアガッたな。

アッシャーだ!うわあアッシャーだ!とテンション上がった、"あの頃"のアーティストだと思うんだよな、アッシャー。メロディアスなサウンドと甘い歌声、"怖くない"セクシーなブラックミュージックってイメージだった。でも実際いろいろあったひとらしいな?

ジェニファー・ロペスって00年代初め、ちょっと異彩を放ってたイメージがある。
当時、Tシャツ&ネクタイがトレードマークのアヴリル・ラヴィーンを筆頭に、わりとナチュラル・ポップ志向の女性シンガーソングライターがブームで、
その対抗に、ブリトニー・スピアーズ、シャキーラなどの男ウケするセクシー路線が人気で、元祖セクシーアイコンのマドンナが007の主題歌を担当して話題になってたり、ホリー・バランスのMVがセクシーすぎると批判されたりしてたことを印象的に覚えてるんだけど、
そこへきてジェニファー・ロペスは、ちょっと迫力のある、媚びないセクシーさを打ち出していて、R&Bというジャンルへのとっつきにくさもあって、なんだか怖そうと思っていた、孤高のイメージがあった。なぜだかジャネット・ジャクソンと混同したりして、ちょっと別格、というイメージがあった。

その後、アメリカンアイドルの審査員やってるのを見て、あ、なんだ、意外と気さくなひとなのか、こんなとこにも出てくるようなひとだったの? もっと大スターだと思ってたのに、と、ちょっとイメージが崩れた、そういうひとだった。

俳優としてのキャリアを知らないなりに、このひとがこの役を演じる、説得力がすごかった。セクシーでチャーミングだけど、男に媚びない。迫力がすごかった。

私の姉妹よ、って、颯爽とやってくるJFL、三人組、圧倒されちゃう、怖すぎるよな。カッコ良すぎた。

記者の存在が良かったよな。いろんな階層、いろんな年齢の女たちが出てくる…本当によくできた企画・脚本・キャスティングだった。

日本のフェミニズム映画はここから始めなきゃいけない気がしてるんだよね、テレビの中でも日常でも女が男に接待する風景ばかり、水商売、おもてなしの国で、学者の女やキャリアウーマンの女や主婦の話は未だにマトモにつくられないなかで、水商売の女が男に中指立てる映画を作らなきゃ、貧困と性差別の最中にいる女に寄り添わなきゃ、始まらない気がしてる、広義の水商売を生業とする女たち、フツウに生きていて、これもう風俗で働くしかないんじゃないか、と考えたことがある女たち、めちゃくちゃいると思うんだよ。。

日本のフェミニスト(の自覚があるかはともかく性差別に反対しているひと)たちの中の経済格差についてそろそろ真剣に語られるべきだと思うんだよな。ここで分断されちゃいけないだろって。

性差別をなくせるならレディースデーなんかなくなってもいい、とかいう女性がいて、私も中学生のときはそう考えてたんだけど、大人になると、男女で収入格差がある、それこそが性差別なのだと知った、いまの私はレディースデーがなくなると映画鑑賞を趣味にはできないと思うし、女性映画監督が圧倒的に少ない日本で、映画監督志望の若い女性が安く映画を見られる日があることのなにが悪いと思う。レディースデーなんかなくていい、と言えてしまう大人の女性は、レディースデーなど必要ない階層にいる人なのだと思う。どちらかというと、レディースデーもあれば、メンズデーもある、トランスデーもある、選択肢が多い世の中であってほしいと思う。

そういう、そういうことにで思考が飛んだ。どこまでも格差の話だったと思う。ジョーカー、パラサイトがノミネートされて、何故これがノミネートされなかったのか……映画を取り巻く環境含めて、いまの映画だったと思う。
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