たまこ

ルース・エドガーのたまこのレビュー・感想・評価

ルース・エドガー(2019年製作の映画)
3.7
少年兵だった7歳の少年を養子に迎え愛情を注いできた両親は、高校教師から優等生である息子の思想に関する疑念を聞かされる。

息子Luce、友人達、両親、教師。そのどれもが決して悪人ではない。なのに、偏見が疑念を生み、プレッシャーが偽りを創り出し、ミスコミニュケーションがミスアンダスタンディングを決定付け、人間関係がこじれにこじれていく。

登場人物全員がいわゆる善人であるがゆえ、知性の仮面を被った“敵意”が連鎖的に深まっていく様子に胸が詰まった。怒鳴り合うことはないが、丁寧に聞こえる言葉の端々で脅し合い罵り合うのである。

「ゲットアウト」は人種問題の根深さをコミカルに浮き彫りにしたが、本作品はまた違う角度から人間の偏見のややこしさに切り込んでいる。マイノリティー同士の偏見、上から目線の同情が生むおかしなレッテル貼り。会話の一つ一つが心理ゲームのようで、見終わった後の疲労感がすごい。

しかし、こういうマイノリティーへの偏見や差別を、いつまで日本人は対岸の火事と思い続けるのだろう。
自分とはちょっと違う人を寄ってたかって皆で冷やかし、遠ざける。その行為こそが紛れもない偏見であり差別なのだといつ気づくのだろう。
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