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1917 命をかけた伝令のnori8のレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
4.1
アカデミー賞のテクニカル部門を
総なめにした話題作。

ところが、全編1カットを意識して
その一連の動きを気にしながら
見ていたのは序盤まで。

幼い子を抱える可憐な母との
突然の出会いで、戦場の緊張感
とカメラワークへの“集中”から
一気に解放され、作品の世界観も
ガラリと変わる。

無謀な殺りくを食い止めるために
一途に走り続ける名もなき上等兵の
前に次々と現れる苦難。

最前線の兄を救いたい、と
共に走り始めたものの
志半ばで命を落とす同志。

すべての思いを背負って
制止を振りほどき爆撃の中を駆ける
クライマックスは、まさに圧巻。

決死の出撃を前に
優しく包み込むような声で
「ふるさとに帰ろう」と歌う兵士の
声が、いつまでも耳の奥に響く。

1カットにこだわったのは
「007」を撮った監督の
単なるテクニカルな挑戦ではない。

戦争の苛烈さと無情さ。
心の奥に刺さる慟哭、情念、愛…
1人称でこそ描ける“心のストーリー”が
この作品には必然だったのだと
見終わった後、思い知らされた。

至極の映画体験に感服。
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