つかれぐま

1917 命をかけた伝令のつかれぐまのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
3.0
3/25@大泉#6

<ノーランを追うメンデス>

ダークナイトに影響されたスカイフォール。
そしてダンケルクをフォローしたかのような本作。なぜサムメンデスはクリストファーノーランを追い続けるのだろうか。

アマチュアは過程が、プロは結果が大事と言われる。少しく誇大表現にも思えるワンカット風はあくまで「過程」であり、それがもたらす負の要素も含めて、作品としての「結果」は果たしてどうたったか?

(スコフィールドの疾走を真似て)絶賛の嵐に逆らわせてもらうと、私はワンカット故の時間の流れの不整合が最後まで気になってしまい、残念ながら没入まではできず。時間の流れを凝りに凝って魅せてくれたダンケルクとどうしても比べてしまい、物足りなさが残った。また、所々に顔を知ってる有名俳優を配置することで、いちいち現実に引き戻されたのも残念。あれは没入するには逆効果だったのではないかな。

ブレイクの退場は全く予想できなかったし、見る見るうちに形相が変わっていく描写は、疑似的な臨死体験だった。ただそこからは、スコフィールドが生き残ることが予想できてしまい、緊迫感に欠けた。フランス娘とのやりとりの長さなど「それ必要?」と思える冗長さもいくつかあり残念。

スコフィールドがドイツ兵に撃たれて暗転以降は、彼の夢あるいは死の目前の予知夢のようなもので、現実のものではないとも解釈できる。そのほうがそこからの幻想的なシーン連続の説明がつくように思えた。

メンデスとノーラン。
同世代の英国人監督二人に共通した特徴は、圧倒的な映像の強度の前に、ストーリーが負けてしまうことがある点だ。どうしても「撮りたい画」を優先してしまう傾向がある。そこがいいという意見も当然ありで、評価が分かれるところだが、本作もストーリーの強度が(特にアカデミー賞を争うには、今日性が)足りなかったのではないか。

蛇足:
都合よく牛乳を見つけるシーン。
”こんなところに牛乳が。ラッキーだわ”って「カメ止め」かよ(笑)。私はどうしても左脳で観てしまう。本作は右脳で観る映画なんだろうな。