アラバン

マーティン・エデンのアラバンのネタバレレビュー・内容・結末

マーティン・エデン(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

傑作。
ナポリの労働者青年が、上流階級の娘に惹かれたことから独学で作家を目指していく。

身分違いのロマンスであり、底辺青年のビルドゥングスロマンでもあるが、何より良かったのが、大切なものを失った痛みによって変節していった主人公の描かれ方。

喪失の痛みから立ち直れず、作家としての成功によって、逆にその虚しさが肥大化していく、、そんな空虚で不安定な人物造形は見事で、演じたルカマリネッリは素晴らしく、特に目が死んだ魚みたいになっていたのは天才的。

自分が成功したことによって周りが変わってしまったと思い、勘違いな自己正当化をしていたものの、昔の自分の幻覚を見ることによって、実は最も変わってしまったのは自分自身であることに気づき、牢獄の鍵を手にする最後のチャンスを自己憐憫によって自ら手放したことを悟ってダメ押しの絶望を感じてからのラストへの流れは、余白もたっぷりで完全に好みだった。(全部推測)

それにしても、社会主義者に対する批判の言葉も完璧に的を射てるし、ブルジョワの自由主義者に対してお前たちこそが社会主義者だと言い放ったことにも同意100%。慧眼。そこで言っちゃダメだが、、、

彼の心象風景である青いフィルム映像や子供時代の映像が差し込まれる演出も良かった。船、、、、。
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