いの

オフィサー・アンド・スパイのいののレビュー・感想・評価

3.8
世界史コンプレックスを抱えておる。こんなアタシでも、ドレフュス事件という名称は知っておる。今回は、映画として楽しむということよりも、お勉強として観賞。「実話に基づく」というクレジットが最初に出たから、そのクレジットを信頼して観賞することにする。つまりは、事実のうえに大幅な脚色が加えられていることはないだろうと。
国民国家が形成される時代。人々はあからさまにユダヤ人への憎悪をみせる。無実のドレフェスを、無実だと知りつつ、罪をなすりつけ真実を隠蔽。事実を明らかにしようとする者にも迫害の手が及ぶ。この題名は、英題や邦題よりも、原題の“J'accuse”(私は告発する)の方が良い。エミール・ゾラの新聞での告発も初めて知った。ルイ・ガレルがドレフェスを演じてると知ってて観てるのに、一所懸命に目を凝らしてみても、どこにもルイ・ガレルの面影をみつけられない。全くの別人物のように思える。何年も拘束され骨と皮ばかりになっても、矜持を持って立ち続けるドレフュス。ルイ・ガレル渾身の演技といっても差し支えないと思う。ピカール中佐が、最後の対面でドレフュスにかけた言葉がひっかかるけど、それはピカールを英雄にしないという監督の意図なのかな。無実が明らかになっても全くスッキリしないのは、こういった事実の隠蔽や改ざんは、現在の日本でも行われていることだからか。ドレフュス事件を過去の遺物とすることができないわたしたちだからか。(字幕監修は内田センセイだった)
いの

いの