【人間の皮】
「人間は皆兄弟」と、自称平和を愛する者たちは言う。
しかし、実際にあなたが「同じ」人間として認識できるのは、本当のところどの辺りまでなのだろうか?
確かに地球上に存在する、種としての人類に該当する生物は、人間と言えよう。
ではあるが、人間は誰しもが、個人レベルでも集団レベルにおいても、我と他を比較、或いは区別し、「我よりも劣等な者たち」を作り出してレッテルを貼り、迫害する。
私たち人間は、己を保つための手段として、特別であるとか、優越しているといった意識を必要としているのかもしれない。本能的に。
少年が彷徨う中で目にし、体験したもの。それは剥き出しの「人間」であったのではないだろうか?
自らが迫害される「異端」の側に身を置くことにより表出された、本能的な攻撃性と冷酷さ。
ラストの少年の目は、既に最初の少年の目ではない。
少年の目は死んでしまったのか?いや、少年の目は歳を取ってしまったかのように思われた。
人間であることに疲れたのかも知れない。
冒頭の静止画のような一軒家のカットに、出会い頭に心を持っていかれてしまった。
抑制された世界の中に、人間の本性が投影されており、観終わった後には、色の無い余韻が残った。