Nasagi

異端の鳥のNasagiのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
4.0
普遍性をもたせるためにエスペラント語で撮るというこだわりがすごいと思う。

全編を通じてほとんど暴力で満たされているがゆえに、赤軍兵士と木の上でうたた寝をする場面などの束の間の安らぎが際立って見えた。
傍観者であり被虐待者であった少年は、残酷な世界を凝視することを通じてじょじょに変容し、その一部となっていく。まるで観客までこの世界に引きずりこもうとしているかのようだった。
地獄めぐりの旅でありながら、最後にちゃんと地獄から帰還できたのかすら定かではなく、むしろ戦争は終わっても地獄は続いているんじゃないかと思わせるようなラストだった。

動物たちの本能的な行動と人間の欲望、暴力を重ねている場面がおおいことから、人間の内にひそむ獣性みたいなテーマを描いているのかと思いきや、どうもそういうレベルからさらに突き抜けていたような…
じっさい嫉妬心や復讐心にもとづく暴力って動物にはないもので、いかにも「人間的」なものだよな、と感じた。
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