回想シーンでご飯3杯いける

ザ・レポートの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ザ・レポート(2019年製作の映画)
4.3
これもamazonプライム・オリジナル作品。主演はアダム・ドライバーで、かなり硬派な社会派作品である。

本作は2001年のアメリカ同時多発テロ以降にブッシュ政権下で行われた、CIAによるアルカイダ関係者に対する非人道的な拷問と、次のオバマ政権下で行われた実体調査を描いた実話ベースの作品。アダム・ドライバーは、民主党上院議員から任命された調査のリーダーを演じている。

とにかく専門用語が多く、話の筋を追うだけでもなかなか大変ではあるが、作品が目指す方向性を把握すれば、理解の助けになる。

同時多発テロ以降のブッシュ政権下では、テロ撲滅こそが最大の正義であり、容疑者に対する尋問手法も表沙汰になっていなかったが、オバマ政権に代わったのを機に、人権の観点から当時の行き過ぎた拷問にメスを入れる動きが始まった。テロ実行犯は悪であるが、彼らや関係者の扱いは法に則ったものであるべきで、憎悪の連鎖になってはならない。

映画の世界でも、同時多発テロ以降は、テロ撲滅の正義を前面に出すあまり、中東諸国全体に対する偏見を助長するような作品が散見されたのも事実。そんな中、制裁と虐待、あるいは殺人は、別物であるべきだとする、本作のような人権的視野に立った作品が生まれたのは素晴らしい事だと思う。

作品内ではアダム率いる調査委員会の存在意義を問う下りもあり、決して民主党側だけの立場で作られた作品で無い事が分かる。一歩間違えるとグロシーン満載の胸糞映画になってしまうので、観る側の理解力が問われる作品でもあると思う。