まりぃくりすてぃ

水上のフライトのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

水上のフライト(2020年製作の映画)
3.0
国際線のCAが乱気流で機内天井に叩きつけられて下半身付随となったが、カヌーで心が復活してパラリンを目指します。同じ頃、飛行機整備士を人員整理でクビになったが身障者向け装具づくり技師として人生再出発してた優しい青年と、ついでに恋にも落ちます。さあ、全世界の皆さんを東京五輪開会式へ、お・も・て・な・し!
────っていう JAL-JAL(ジャルジャル)またはANA-ANA(アナアナ)した美麗あおはるストーリーかと思ったら、ちょっと違った。CAじゃなくて走り高跳び選手?(あたし元陸上部だから、しごかれたから、陸上競技はあんま興味ないんだけど。ま、いいや。)ライバル女子もいる。さあ、どんなスポ根に? またはどんなハンディ乗り越え感動話に?

あやみは、泣き演技とエフォートレスなスイートガール演技をW得意領域にしてきたんだけど、今回「ぶっきらぼう・ふてくされ・怒り」の演技を前半こってり見せてくれた。上手いね! 最初に車に撥ねられた「ギャッ」な姿もよかったよ(☜本人のワケないけども)。
ドス効かしたりした完璧モードのそんなあやみを、助演者たちは(子役ふくめて)まったく邪魔しない。みんなまあまあだ。途中登場の遥亮には期待しちゃったぞ。話も画もほとんど私たちを退屈させずに、さあ、中盤まで来た!(これであやみ以下全員が関西弁喋ってくれてれば、もっともっと魅力。あやみは商業映画では関西弁ぜったい使わせてもらえないんだよね。似合うに決まってんのに。。)
とにかく、あやみ率高し! 主演あやみがフレーム内にいるシーンがたぶん97%超え。こんなあやみ映画は過去になかった。(あ、私と髪型が近い。)

で、後半、つまんなくなってった。。。。
富士山とかの景色はいいけど、シナリオがね~、、、、、、

群像劇の頂上であやみ姫が仁王立ち!っていう構成にすればよかったのに、徹頭徹尾あやみにしか焦点が当たらないんだもん。カヌーのコーチ/少年/少女/技師の青年/その親友だった人/お母さん/亡きお父さん/陸上部のライバル/カヌーのライバル、、、彼ら彼女ら一人一人のドラマをちょっとずつでも描いてくれれば相当面白くなっただろうに。感動も増しただろうに。
例えば、少年少女は過去に虐待受けて今もその余波がある、とかを具体的に。そして誰よりも、技師の青年(遥亮)の過去~現在は、特に特にドラマ盛り上げに重要だったのに、アッサリのポイ捨てぎみ。遥亮は遥亮にしか出せない色をちゃんと出そうとしてたみたいなのに。
結局、みんながヒロインに協力・協力・応援・応援・支え・支え、、、、喧嘩さえもせず、、、、
それは何だか、、まるで、ジャズのピアノトリオを私たち聴衆が迎えて前半こそ「いい音色。タッチ上手いしアドリブセンスいいし、元のメロディーもいいし……」と聴き惚れてたけど全然一度もベースソロもドラムソロもなくピアノばっかりが活き活きしつづけるうちに、後半「あれ? よく聴いてみると面白味なくね? さっきからピアノしか聞こえない。堅実に頑張ってくれてるベーシストとドラマーをどうすんの」となっちゃったみたい。トリオとしての音楽を聴けたらよかったのに、だ。
スポ根としても、ハンディ乗り越え話としても、何か「良い子ちゃん映画」なばかりで、とにかくあやみの演技がすばらしく助演者たちも何の問題もなく彼女を支えてたのを、シナリオが粗末に扱っちゃって終わった。これじゃぁね。。。。。。

画のことも。「カヌーで水上を走るヒロインが、まるでフライトしてるみたい」ってのを台詞と二、三秒のさりげない映像で済ませちゃったのが、もったいない。ここもっとキメキメ箇所にしてもらいたかった。

一方、あやみが泣いてない~泣き始める~新たに涙が湧き落ちる、を見せきったワンカットは、女優あやみのルーチン的に真骨頂。
辛口な私がなぜ女優あやみを支持しつづけるか。彼女の3D(リアル)な涙を今まで何度も見てきてるから、大好き。

にしてもシナリオに恵まれない彼女だ。製作委員会的映画は彼女のフィルモ上の随一の傑作『正しいバスの見分けかた』(自主)を今後とも超えれそうにないのかな。美の絶頂にいて(たぶんあと四年間ぐらいはもつ)いろいろ伸びしろありげでいるうちに、諏訪敦彦・深田晃司・濱口竜介・山田佳奈といった第一級アーティストたちの作家性に救われてほしい。このままだと大資本たちに骨か脊椎しゃぶられて終わっちゃう。