るる

エルカミーノ: ブレイキング・バッド THE MOVIEのるるのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

この世界のどこかにいるスキニー・ピートのための映画とわかって良かった。タイトルの意味、車の行方。あんたは俺のヒーロー、ジェシーは俺のヒーローだった、そう思ってドラマ放送時から10年経った、なんとか生き延びた、生き延びている、そんな元ジャンキーがたくさんいるんだろうな、と思う、そういうファンがたくさんいるドラマなんだろうな、と思う。どうなんだろう。依存患者はフラッシュバック起こしちゃって見られないドラマなのか。まあでも依存者の家族とかね。

今後エルカミーノはある層にとっての憧れの車になるんだろう。私はしかし、Netflixにアクセスできない貧困が気になってるのでな、そこはつらいな。金銭面だけでなく情報に食らいついていかなきゃ、10年後、5年後の続編を見られる保証なんてどこにもないんだよな。。

人生やり直し、更生のために必要なことが詰まってて良かった、檻に入れられてたのは、麻薬更生施設のメタファーでもあるのかな、えぐられるような気持ちで感情移入するひともいるんだろうな…と思ったよ。とはいえフラッシュバックの描写つらかったな、かわいそすぎたな…

師匠のマイクとの対話から始まり…岸辺!マイクの最期を連想させて良かったな…

廃車場のジョーにはてめえ!と思ったけど、できる限りのことをしてくれた、ジェシーが愛されてたことを示してくれたし、人消し屋は約束を守った、プロフェッショナルだったし、

無邪気に大学進学を薦めるウォルター先生、この期に及んで教育・学問の大切さを説けるあたり、アメリカって感じしたな、成熟している…でもほんとに更生のための映画だった。

ウォルター先生が妻に白状した「自分のためにやった」がめちゃくちゃ名言、名シーンだと思ってるので、それを踏まえたセリフ、「お前は幸運だ、特別なことをするのに一生待たずに済んだ」に、大人のろくでもなさと未来ある若者への希望が滲んでいてよかった、そして返す返すもガスのもとでビジネスについて学ぶジェシーを見たかった、出会う大人の順番が違ってれば…なあ…

それにしてもウォルター先生だけ見た目があまり変わってなくて、まるで亡霊が出てきたようでギョッとしてしまった、しかし吹き替えの声がやや衰えていて、なんだか寂しくなってしまった、

しみじみできたので良かった、キャストの老い、作品外の時間経過を感じられた部分も含めて、良かったんじゃないかと思う、感慨深さにつながったよ、

トッドが出番の多さの割りに、役どころのムカつき度の割りに、変化が著しくてやや残念だったけど…トッド、あいつなんだったんだろうな、サイコパスという言葉で片付けたくない、無邪気な悪…このドラマの登場人物みんな無邪気に無自覚に悪だよな、お前の悪はお前が自覚してるソレじゃない、こっちだぞ、そういうとこだぞ、っていう、みんなな…

結局、金が足りねえのかよ!!?? 金のためにまた!!?! やんなきゃなの!!?? っていつもの展開も様式美で良かった、抑制が効いてて良かったな…

コールガールだかコンパニオンだかの描写だけ、尺の割りに意図がわからんというか、今風な描写だったからこそ、物足りなかったかな。ドラマで散々、ドラッグのために売春する愚かな女たちを描いたのだから、彼女たちを救済するような描写であってほしかった、ここへきて、ドラッグと無縁な娼婦もいるよ、ゴージャスで仲間と仲良しな女たちもいるよ、って描かれても、ベタというか、綺麗すぎたような。でもあんなもんか、十分な救済…他の生き方の提示…か?

西部劇には苦笑、彼もまたジェシーに憧れるどこかの誰かという感じ。とことん男のこじらせについての話なんだなと、

それにしてもジェシーに貫禄がついて相手が誰であれ渡り合えるほど成長した描写に安堵と小気味良さを感じられたので、なんだか不思議だった、ちゃんと同調というか同情できた、よくできていたと思う、両親との決別、「あんたたちのせいじゃない」ちゃんとしていた、ジェシーの新しい生い立ち、母親の生まれは沖縄米軍基地、当たり前だけど、そういう人生もあるんだなと思った。

殺されてしまったシングルマザーの彼女、その息子、スズラン毒で生死をさまよった子供、彼らにも救いを…と思っていたので、最後の手紙、ホッとした、しかし何を書いたんだろうな。。金を渡すことにこだわらないあたり、ウォルターとは大切にしてるものが違うとわかって良かった。

どこまでもファンのための作品で良かった、誰も到達できなかったところへ、良い結末だった、連れていくのは彼女なんだな、彼女と行くんだな、やはり彼女だったんだな、一緒に連れ出してくれるんだな、とも。

シーズン一気見した甲斐あった、そんなにツボにはまらなかったけど、プライドこじらせてしまったり、無神経に触れたときのつらさはわかる、メインターゲットじゃないからこそ、グイグイ見ることができた、不思議なドラマだった、爽やかな気持ちになれる後日談で良かった。
ベターコールソウルの顛末も楽しみ、キャラクターが好き、という意味ではあちらのほうが好みなんだよな、マイクもガスも好き、ソウルはソウルで幸せに生きていってほしい、おじさんもやり直せると示してほしい。

幸あれ…幸あれ。
るる

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