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ユンヒへのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

ユンヒへ(2019年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

良い映画だった。手紙を物語の推進力として用いる映画はうまくいかないことが多いのだが、本作の雰囲気は手紙だからこそ生み出されているもののように思う。

派手なラブシーンやクサイ台詞もない。ただ2人が見つめ合って交わした僅かな言葉だけで、2人がどれだけ愛し合っていたか、今もなお愛し合っているか、それに自分たちのアイデンティティにどれだけ苦しんできたかを感じることができる。慎ましく、それでいて力のある映画が大好きな私には、本作のこうした愛情と苦悩の描き方がたまらない。

こういう現実世界のどこかで起きている話に対して「ありえない」と一蹴してしまうような批判は何の意味もないだろう。何があり得て、あり得ないのかの線引きは個人の裁量次第であるゆえ、それがすなわち作品の良し悪しを決めることにはならない。特に本作の良さをわからない、わかろうとすらしない人は本当の意味で自分のアイデンティティに悩み、苦しんだことのない幸せな人だろう。どのような仕上がりであれ、作品に対しては常に寛容でありたいものだ。
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