前作『公衆電話』の続編に当たる作品。

手塩にかけて育てた娘が結婚する。前作で寡黙だが愛情溢れる父親を演じた入江崇史が、本作では万感の思いで娘を嫁に出す父親を演じている。この連作は余韻が本当に良い。

うちは息子だけで気が楽だ、なんて思った(笑)。

松本動監督による2018年製作「公衆電話」の続編である本作では、前作同様に、ごくごく普通で、何処にでもありそうな、父娘の物語が展開するが、未だ不安や閉塞感が漂う今の社会において、逆に本作で描かれたごくありふれた幸せが如何に尊いか、身に染みて伝わってくる。
前作の「公衆電話」では立川市が主なロケ地で、見知った所も出てきて親近感を覚えたが、続編では八王子市が主な舞台として登場する。
三十路の咲は、そろそろ女として一つの“ゴール”を迎えたいと内心思っていたが、家具職人の彼が思わぬタイミングで遂にプロポーズしてくれる。
口にはしないが、娘の将来を気に掛けている父・静夫を安心させたくて、咲は彼氏を連れて結婚の報告をしに行くのだが…
適齢期の娘を持つ父親の大半がそうだと思うが、早く良き伴侶と巡り合って幸せになってもらいたい反面、いつまでも親元にいて欲しいという相反する気持ちを抱いているのではないだろうか。
タイトルになっているカセットテープが、その父親の複雑な心境を代弁していると思うが、テープに吹き込まれた内容は、聴く者の古い記憶、娘が幼かった頃を呼び覚まし、何とも言えない心境にさせてしまう。
前作同様、本作でも終盤の展開はエモーショナルで、咲の美しい姿と共に静夫が抱くであろう想い、それは過去から連綿と続く記憶と共にあるものが、我々観る者の心の襞に沁みてきます。

2019.10.20 札幌プラザ2.5
第14回札幌国際短編映画祭

「公衆電話」の続編。
やはりお父さんがシブくてカッコイイ。