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ガンズ・アキンボのsanbonのレビュー・感想・評価

ガンズ・アキンボ(2019年製作の映画)
3.7
「ダニエル・ラドクリフ」は、一体いつからこんなに汚らしい役どころが板につくようになったのか。

「ハリー・ポッター」では、あんなに純真で真面目そうな印象が強かったラドクリフが、シリーズ完結以降はもっさりと蓄えた無精髭がチャームポイントになり、敢えてそうしているのか色んな意味で"汚れ役"ばかりを熱演している。

そして、今作もその例には漏れず、パンイチ姿にガウンを羽織った変質者スタイルで街を駆け巡り、塞がった両手でナニを上手く掴めずに小便をまき散らし、腐ったソーセージを頬張りゲロまで吐き散らかすイカれた役を嬉々としてこなしている。

そういう意味では、トータルコーディネートは最早いつものラドクリフという感じで、何故だか既視感すら感じる程のビジュアルの完成度ではあるのだが、今回はそこにワンポイントアクセントととして両手に拳銃が直接固定されているというのは、ラドクリフの個性に負けないくらいに中々おしゃんなアイデアだ。

更に、そうなったきっかけが、殺し合いを日々生配信しているイカれた闇サイトに、日頃の鬱憤を晴らすべく"クソリプ"を投下しまくったせいというのも、なんとも向こう見ずでダサくて馬鹿馬鹿しい理由が絶妙である。

そして、この行為が運営の怒りを買い、ラドクリフは闇の組織に襲撃され眠らされている間に、両手に拳銃をビス止めされた挙句、強制的に殺し合いに参加させられる羽目になるのだが、欲を言えばこの殺し合いでは"複数人"の殺し屋との"一対一"の死闘を観てみたかったというのは本音としてあった。

決して逃げられず、否応なく戦わなくてはいけない状況下に追い込まれているうえに、運営としては絶対に生き残れないのを見越してゲーム感覚の見せしめを行っているのだから、どうせなら"コメディ特有のノリ"を活かして、ひょんなことから偶然勝ってしまった事でヘタに視聴者の人気を獲得してしまい、ゲーム以外の方法では殺すに殺せなくなった事から、さらに運営からの怒りを買うような演出があればなお楽しかったことだろう。

それこそ、絶対的支配者の想定を覆す"ジャイアントキリング"は、観ている側にとっても一番のカタルシスだし、そのうえでラドクリフの思惑とは裏腹に連勝を重ねていくような展開なんかが起これば"爽快感"は半端じゃないものになっていたと思う。

そうやって、何戦かお膳立てをしたうえで真打である最強の殺し屋「ニックス」が登場していれば、展開的にはもっと盛り上がっただろうなと感じるところは正直あった。

なにより、せっかく残弾数を100発に制限する縛りを設けていたのに、クライマックスで一気に消費させるだけでそれを活かす展開がちゃんと用意されていなかったので、やはりそういう面でも限られた弾数で連戦を強いられるほうがスリルが増すし、よっぽどメリハリのある展開を生み出せていたよなあと思ってしまった。

とまあ、ところどころ展開に多少の不満はあったものの、眼前に広がるハイテンポなバイオレンスにただ身を委ねれば中々にいい作品だったと思う。

とはいえ、そろそろ汚ったねえラドクリフも見飽きてきた感がでてきたので、ここらでいっちょまともなキャラを演じて逆に演技の幅を広げてみるのもいいのではないだろうか。

それにしても、海外のクソリプってまるで日本の「お前の母ちゃんでーべそ」並の煽りで、どことなくレベルの低さを感じるのだが、そこは逆に日本のクソリプが陰湿すぎなだけで世界基準はこんなもんなんだろうか。
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