社会のダストダス

悪なき殺人の社会のダストダスのレビュー・感想・評価

悪なき殺人(2019年製作の映画)
4.1
偶然が生んだ完全犯罪、これは面白かった。フランスがいくら狭い国だからって、こんな偶然あるわけないだろって気もするけど。“動物だけが知っている”の英題もなかなかいい得て妙。

結構ずっと観たかった作品だけど、自分の契約しているサブスクでは配信されておらず、円盤も多分存在しないという状況だった。しばらく忘れていたけど、『落下の解剖学』を観た頃に本作をまた思い出した。同監督の『12日の殺人』が公開されたためか、新宿でのみ上映されているらしいことに気づき遂に鑑賞、運が良かった。

フランスの郊外の町で、一人の女性が失踪し、遺体となって発見される。発見者の農夫ジョセフ、不倫相手のアリス、アリスの夫でネット恋愛を隠れてするミシェル、同性の恋人を追って町へやってきたマリオン、遠く離れたコートジボワールで詐欺をするアルマンの5人の行動が事件を複雑にしていく。

偶然もここまで重なると、もはやドッキリなんじゃないかと疑うレベル。“悪なき殺人”という割にはそれなりに悪意を感じる展開が続くが、殺人が起こった背景、経緯、顛末もこうなると古畑任三郎でもコナン君でも辿り着くことは困難だろう、毛利小五郎くらい適当なら「お前だ!」で意外と当たるかもしれない。世の中には、こんな奇跡みたいな偶然が重なったことで迷宮入りしてしまった事件も実際あるのだろうか。

フランソワ・オゾンの『私がやりました』の主演、ナディア・テレスキウィッツも出ている、本当に美人だし、出てきて早々に脱ぎ始めて、それまで陰鬱な展開だったので急に、うおおおおー!!!となった。でも、今思うと『私が~』のほうが内容が“悪なき殺人”な気がしてきた。

コートジボワールのアルマン君が一体なぜ遠く離れたフランスの殺人事件に関わるのかというのも面白いが、チャット画面が多い展開が映画の後半にくるので少しダレるのが玉に瑕。彼の元カノのオチが一番ありえねえだろ!って思ったので、ここは集中力を持って観たいところ。

期待して機会を待っただけあり面白かった。『12日の殺人』も何年も待たなくていいように、できれば劇場でやっている間に観に行きたい。この監督の映画、邦題が『○○の殺人』が続いているので次は何の殺人になるのだろう。