なまくらウォッチメン

悪なき殺人のなまくらウォッチメンのレビュー・感想・評価

悪なき殺人(2019年製作の映画)
4.1
面白かったが、終盤に至るまでの各々の視点のすれ違いを楽しむ展開は、それに終始するにしては間延びを感じてしまった
アビジャンパートからのマジック・リアリズムに絡めた怒涛のテンポが良かっただけに、もう少し各パートを切り詰めれば良かったのになと思う

脚本構成と各パートの重複部分の省略が巧みで感心したが、反面映像的なこだわりは感じられず、小説向きの内容だと思ってしまった
人物が部屋に招き入れられるよりも早くカメラが先回りしていたり、農夫とヒッチハイカーの邂逅とその後の再会の演出のトーンが全く同じだったり、所々気になる箇所もある

個人的に気に入ったのは、「偶然に勝るものはない」と提示しつつ、それが詭弁になっているオチの付け方
フランスとコートジボワールが繋がるマジック・リアリズム的な展開は、一見偶然に見えるようで作り手が編集で介入しているメタ構造だと解釈できる
あのオチ自体も、運命のイタズラとしてそのまま受け止めるよりは、「偶然」を皮肉ったものに思える