コマミー

ファースト・カウのコマミーのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.7
【はみ出しもの同士の友情と牛】



※[再投稿]初鑑賞日2021年7月18日(輸入盤による鑑賞)。fans voice様のオンライン試写会にて再度鑑賞。



本作を最初に鑑賞したのは、上にも書かれている通り、2年前の7月だ。本作が中々日本で公開されない為、英語も分からない癖に見栄を張ってAmazonで輸入盤を購入して鑑賞した。だがそんな英語が分からない私でも、だいたいの雰囲気を感じ取れる作品であり、他の方の様々なブログでのネタバレレビューを見ながらそれなりのレビューをFilmarksに投稿した。
そして今年、5年の時を経て晴れて日本公開が決定。2年前の「ケリー・ライカート映画祭」の成果だと思うが、やっと本作が日本でお披露目となる。


再度鑑賞したのだが、やはり素晴らしさは変わらなかった。
主人公の"クッキー"と中国人の"キング・ルー"との"優しき友情"が余す事なく描かれており、見た者も優しい気持ちになる作品だった。そして同時にちゃんと"牛の乳"の事に関して「バレないか」どうかなどの"緊張感"もちゃんと感じ取れる事ができ、綺麗事だけではない一面もちゃんと描いていた。これは、今までの"ケリー・ライカート"作品でもちゃんと描かれていて、"長閑な風景の中にある格差"というものを描いているものであるのだ。クッキーとキング・ルーの置かれている立場からそれは感じ取れるだろう。

クッキーとキング・ルーの"落ち着いた会話"、牛への優しい手触り、その乳で作った"ドーナツ"、程よい物語の緊張感、そして最後の2人の添い寝…私の中で「終わってほしくない…まだ2人を見ていたい」と寂しい気持ちに見終えた後感じてしまった。この感覚は私が数多く観た映画の中では初めてかもしれない…物足りない訳ではないのだが、2人の"この先の動向まで見守りたい"…そう感じて仕方がなかった。これは凄い映画だ。

本作を通して、よりまた多くの人にケリー・ライカートの事を知って貰いたいなと思う。こんな優しい雰囲気の作品を作れる監督はあまりいないと思うし(強いていうならば「コロンバス」のコゴナダとか)、絶対にハマる人はいると思う。

今月は「ショーイング・アップ」も日本公開されるケリー・ライカート…是非「ファースト・カウ」同様に観て、日本でもファンを増やしてほしいなと思った。

あと、ドーナツが食べたくなった
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