岩嵜修平

ファースト・カウの岩嵜修平のレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
3.8
味わい深い…。生活のために違った目的で未開の地を訪れた2人の優しい男が唐突に出会い、資本主義に巻き込まれ、ついには資本家に追われる様を淡々と描くのだが、ゆったりと濃厚な人間関係を描く前半と、スピーディーに2人の逃避行を描く後半のギャップも含め、不思議と面白い。

貧しき者たちが、自らの夢を叶えるためだけではなく、周囲の人たちのことも思い、クッキーやドーナッツを振る舞う姿勢、一度、離れ離れになり、1人で逃げることも出来たのにそれをしなかった選択にグッと来てしまう。1820年代を舞台とした作品で、2010年代以降の観客にも伝わるべきメッセージは明確。

1820年台のアメリカを舞台にした2019年の作品にして、主人公2人をアメリカ人と中国人(彼を追うのはロシア人)、資本家をイギリス人(原住民と夫婦)とフランス人に設定したのは巨匠ケリー・ライカートというべきか。ラストシーンに直結する序盤のシーン(4:3の画面を横切る貨物線…!)も含め、流石。
岩嵜修平

岩嵜修平