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The Great White Silence(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

The Great White Silence(原題)(1924年製作の映画)
3.5
No.20[ロバート・スコットの探検記] 70点

写真家ハーバート・ポンティングは1870年にイギリス南部のウィルトシャー州ソールズベリーで生まれた。銀行家の父フランシスの下で裕福な少年時代を送るも、18歳から4年間勤めた銀行で父の後を継ぎたくないと革新し、23歳の時にアメリカ西部に移住した。カリフォルニアで鉱山労働などを経て果樹園を購入、メアリーという女性と結婚する。しかし、経営能力は父親とは比べ物にならず、結局果樹園経営は失敗に終わってそれを売却し、1年のロンドン生活を経て、今度はサンフランシスコに落ち着くことになる。そこで、彼は長年の趣味であった写真を仕事にすることに決め、人脈を広げたり、様々なコンテストに出品したりするなど活動範囲を広げていった。最初の成功は、1900年にサンフランシスコ湾を撮影した写真がを世界的な賞を受賞したことだろう。その後は写真撮影の以来や日露戦争などへの従軍などを通してアジア地域を撮影して回った。そして、写真を物語に仕立て上げる彼の能力が見込まれて、スコット率いる南極探検隊の専属カメラマンとしての旅が始まることになる。

ポンティングを含めたスコット一行はテラ・ノヴァ号に乗り、氷の張った海を南進していく。道中の船員たちは明るく踊ったり、生物や氷壁に見入ったりと中々楽しそうな様子だ。そのうち、最初の基地に着いて荷物を降ろしていく。彼らが何を持ってきて、どのように使うのかという資料にもなっている。それもそのはず、ポンティングはスコットが生還した後、彼とともに映像や写真を流す巡業で世界中を回る予定だったのだ。そして、同じ理由で、ペンギンやアザラシなど極地生物を間近に捉えた作品でもある。正に『極北のナヌーク』と双璧をなす"極地ドキュメンタリー"といったところか。動物との距離が近すぎる絶妙な嘘くささも同作に近いのかもしれない。

映像が凄い分、本来の目的である探検の説明用に挿入される字幕の長ったらしさに若干飽きつつ、100年前の勇敢な冒険の断片を覗き見ることが出来るだけでも、映像という記憶装置の進歩を肌で感じられるってことなんだろう。こういう作品こそリマスターすべきなんだろうけど、やはり需要がないと厳しいのだろうか。
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