ナガノヤスユ記

雨月物語のナガノヤスユ記のレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
3.9
戦禍の話だ。戦は人を変えるというが、それは何も兵士だけの話ではない。男は、はじめて手にした大金にとりつかれる。自らの手で金をつくる悦びに夢中になる。とりつかれやすい質なのだ。それはすでに家族のためではない。自分のためでもない。逃れることのできない運命。それを妻が見つめている。
戦争にとりつかれた人間の欲望の話なのに、それがリアリズムに向いていかない。これはある種のファンタジー、もっと言えばホラーである。幻惑的で、とりとめもない。だからこそ、モンタージュできない。モンタージュは、映画のマジック。もっとも嘘のような瞬間に真実が宿り、もっとも本当らしい時間こそ疑うべきである。