いわゆるスポ根ものとは一線を画す構成を敢えて装い、その視点の違いによる徹底的に抑えた作風で紡ぐ新たなる野球映画の秀作誕生です。
女子だからプロ野球選手になれないと云う世間体を意に返さず、ひたすら信念を貫き挑むヒロインのチュ・スインを演じるイ・ジュヨンが静かな佇まいながらきっちりとピッチングをこなし弛まぬ目ヂカラで力強い印象を残します。
母親を筆頭に無理なんだから諦めろと言う大人が大半の中で、結果的にスインの素質を見抜いていた２人の登場人物の間接的な支えと、かつてプロ選手になれなかった過去を引きずるコーチとの出会いにより、頑固とは違う偽らない信念を貫き彼女が成し遂げる着地の余韻が静かに沁みます。
性別格差と云う世界的な問題を提起し、サクセスストーリーの形をとりながらも、一発逆転のエンターテイメントに成り得る要素を敢えて牽制して、あくまでも静寂に綴ることで物語が深く浸透して来ます。そして今まであまり見たことがない穏やかながらもズシリと響く韓国映画です。
