CGちょっとロークオリティだなと思わなくもないが、当時26歳だった監督ギンツ・ジルバロディスが全て、文字通り監督製作編音楽全て1人で作り上げた作品ということなので、その辺加味すればむしろ出来過ぎなくらいか。
墜落した飛行機から唯一生き残った少年が、小鳥と共に不思議な島をオートバイで旅するロードムービー。死のメタファーと思しき黒い影の巨人に追われながら、島の東端にあると思しき人の住む街を目指す。
多分に雰囲気映画的な側面があるのは正直否めないけど、生と死について監督の考える種々が観念的だが誠実に伝わってきて好感が持てた。雪山で主人公が影に飲み込まれるシーンでは主人公は暗闇の影から何もない無の闇、ではなく光の中に落ちていく表現が独特で、次第に無と混ざり合っていく様子はタナトフォビアを想起させられる。
台詞を完全に排して、音と穏やかなインストゥメンタルだけなので、非常に観ていて心地良い。ともすると眠りを誘うような単調さ、という欠点として論え無くもないが私は好き。
余りゲームをやらないので今一つ分からないが、ゲームとの類似性を挙げるレビュアーが多いようだ。確かに法則を無視した異様な自然環境や、人間の営為が全く見られない荒地や森林に点在する、考察性の高い廃墟など、所々にゲーム的要素は感じるが、しかしカットやアングルはとても映画的に思う。今度は1人じゃなくても良いので、監督の才気を感じるので是非新作を期待したい。
