クシーくん

銀座カンカン娘のクシーくんのレビュー・感想・評価

銀座カンカン娘(1949年製作の映画)
3.7
銀座カンカン娘といえば高峰秀子の曲という認識しかなかったのだが、本作ではデコちゃんに加えて笠置シヅ子に岸井明に灰田勝彦の四人がそれぞれ個性を見せた歌い方をしていて何度も流れているのに飽きさせない工夫がある。灰田勝彦はウクレレ奏者でもある為か、彼の歌うカンカン娘はハワイアン風になっているのが面白い。全員好きなんだけど、岸井明は相変わらず可愛い。岸井明の再注目来たれ。

全篇に渡って歌い通しなのが良い。歌手という設定上、いきなり歌いだしても全然違和感がない。メインテーマは先に述べた通りだが、今どき十銭ぽっちで買える物はなあに♪の曲も良かったなあ。
生活の苦しさや居候という設定に戦後が背景として見えつつ、良い意味で暗さをまるで感じさせない。灰田勝彦の喧嘩すれば勝てるのに、敢えて戦わずに殴られる理由も爽やかで美しい。こういう映画が必要だったんだよな。

志ん生が役名もそのまま新笑、引退した落語家として登場する。かなり痩せている!この頃は満洲から引き上げてまだ1年か2年足らずなので、あの福々しい、いつもの志ん生とはほど遠い姿が観られるのは貴重。志ん生が「替り目」を演じて終わるこの映画、最後まで観ていると「終」の字と同時に追い出し太鼓まで掛かり、最後の最後で違うジャンルの映画になって笑った。
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