Oto

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のOtoのレビュー・感想・評価

3.5
「みんなみてるからみたい」という、マリトッツォ的な流行り方をしていた印象があったし、「キメハラ」とか言われるくらいの社会現象だったのでその思いは自分も持っていたけど、やっぱりそういった負の感情で劇場に足を運べるほどの熱量は生まれず、優先度が高い映画がたくさんあったからみれずにいたけど、TV放送に合わせて鑑賞。

まずこの手の少年漫画で、前半のミッションがずっと「夢から脱出する」なのはかなり斬新で驚いた。SFとまではいかないけれど『ベイカー街の亡霊』に近い面白さを感じた。新しい敵の切り口として面白いし、アニメをみてきた人にバックグラウンドを教えるというファンコンテンツとして楽しませる面白さがあった。しかもその解決策が夢の中で自決するっていうなかなかショッキングな描写で王道というよりは振り切ってる。

主人公の弱さをここまで明確に描くのも珍しい、長い漫画のうちの一部を切り取っているから必然なんだけれど、降車後は主人公がもはや入れ替わっていて、それを見守ることしかできない存在として炭治郎がいるの新しい。
煉獄は「理想の上司」とか騒がれていたけど、超優秀な「クリエイティブディレクター」に見えた。起きた瞬間に短時間で全員の動きをディレクションして、自分が一番面倒で目立たない仕事を請け負う。それでいて、緊急事態には一番危険な場所に立って部下を守る。結果、ひとりの命も犠牲にしないでやり遂げ、死ぬ間際になっても自分ではなく他の人を考えている。なめてたけどクライマックスは心動かされた、やはり感動の根底にあるのはいつも「家族」。

元々超人気コンテンツの続編(と言いつつこれをみなくてはその先に進めない通過点であること)、煉獄という新たなに魅力的な存在、列車という定番のスリリングな舞台設定、最強を更新していく敵、殺人や行方不明というタブー...歴史的な大ヒットは複合的な要因がありそう。
終わりにあったアニメの告知も、もしこれをリアルタイムでみている子供だったとしたらめちゃめちゃ興奮しただろうなぁと、なるほどこれが国民的アニメのなせる規模感なのか、と驚かされた。

いのすけ、ぜんいつが改めてみてもすっごいうるさくて、芝居力はすごいなぁと思いつつどこか集中を阻害されてしまうのと、煉獄も話が通じなさすぎて、かっこいい側面だけのヒーローがいない。「人と違うことがすごい時代」から「人と同じことがすごい時代」への転換を感じる。
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