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ドロステのはてで僕らのakihiko810のレビュー・感想・評価

ドロステのはてで僕ら(2019年製作の映画)
3.7
劇団「ヨーロッパ企画」の劇団初となるオリジナル長編映画。原案・脚本は劇団代表の上田誠。

とある雑居ビルの2階。カトウがギターを弾こうとしていると、テレビの中から声がする。見ると、画面には自分の顔。「オレは、未来のオレ。2分後のオレ」。どうやらカトウのいる2階の部屋と1階のカフェが、2分の時差で繋がっているらしい。“タイムテレビ”の存在を知り、もっと先の未来を知ろうと躍起になる仲間たち。さらにカトウの意中の相手メグミや5階に事務所を構えるヤミ金業者、カフェに訪れた謎の2人組も巻き込み、「時間的ハウリング」は無限ループに陥っていく......。

アイデア一発勝負で、あっと言わせる物語の掴みはすごい巧く、引き込ませられた。ハンドカメラ(iPhone?)で撮影された、全編通してほぼワンカット風の映像も、物語に引き込ませるためのフックとして機能していてとても良い。
それだけに…物語後半部の、ヤクザやタイムパトロールが出てきてのてんやわんやは、さすがにこのタイプのアイデアの作品にしては「お決まり」すぎ。このてんやわんやが悪い意味での「マンガ的」「小劇場的」になってしまった。
なのでこの作品にはまあまあ高い点数をつけるが、これは作品の前半部のスコアで、後半部は普通に凡作程度の出来だと思う。
「ポストカメ止め」と言われているそうだが、たしかに映画の構成はカメ止めに似ている。低予算でアイデア重視なのもそうだ。ただ、カメ止めほどのキャラクターへの愛おしさも少ないし、なによりカメ止めが秀逸だったのは、映画製作映画ならではの「映画愛」に溢れていたこと。これがカメ止めの素晴らしさを引き上げた。
本作も撮影は楽しそうだし、スタッフたちの映画に対する愛情も垣間見さえこそするが、「カメ止め」ほどまではいかなかったように思える。
よく作ったと思うし、その心意気も買うが、「よくできたお遊び」で終わってしまった感じがあるのが残念
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