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ネバー・ダイ 決意の弾丸のsugasanのレビュー・感想・評価

ネバー・ダイ 決意の弾丸(2019年製作の映画)
3.0
ホワイトハウスから自転車でたった20分の距離にあるワシントンD.C.郊外のスラム街。
ギャングになるしか生きる術がない街で、みかじめ料の集金人として働く少年ルーカス。
彼が請け負ったドラッグ運搬の仕事が、危うい均衡を保っていた街を一変させる最悪の一日を引き起こしてしまう。

街を支配するリンコンの妹の結婚式当日、誰もが大切な家族の幸せを願いながらも最悪の結果を招いていく展開は、役者陣の熱演と印象深いキャラクターも相まって観ていて本当にツラい。
一連の騒動のラストで地獄と化した街と対比するように闇夜に浮かぶホワイトハウスの姿が物悲しさを際立てる。

近年、名優になりたい症候群を患っているジャン=クロード・ヴァン・ダムは脇役かと思いきや結構出番がある準主役といってもいい立ち位置。

股割りも回し蹴りもおまけに声まで封印し、皺くちゃの顔で腰抜けと馬鹿にされる姿はなかなかに衝撃的だが、拉致されたルーカスを救うために取った行動が最悪の結果を生み出す直接の引き金になってしまうのは、彼が90年代に演じた英雄達を皮肉るようで追い打ちでツラい。

作品の印象としては「もし『シティ・オブ・ゴッド』の世界にヴァン・ダムがいたら」といった感じだが、(たぶん)低予算を感じさせない演出に加えてどの役者もキャラクターにピッタリハマって演技も上手いので思わず引き込まれてしまう。

『その男ヴァン・ダム』以降の路線のヴァン・ダム映画としても一二を争う傑作なので、(そんな機会はまずないが)最近のヴァン・ダムでなんか面白い映画ない?と聞かれれば自信を持って本作をオススメする。
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