くりいし

プラットフォームのくりいしのレビュー・感想・評価

プラットフォーム(2019年製作の映画)
4.1
非常に鬱屈とした気分に浸れる不条理密室スリラー。
露悪的なまでに醜悪に描かれている人間の生き様が刺さった。

主人公、ゴレンが目を覚ますと
中央に大きな四角形の穴が開いている密室に閉じ込められていた。
壁には大きく「48」の数字。
穴を見上げれば同じような密室がどこまでも続き、
下を見れば底が見えない程、同様に階層が続いている。
ここは巨大な搭の、上から数えて「48階層」であり、
唯一与えられる食事は穴から降りてくる
エレベーターに積載されている料理だけ。
このエレベーターに盛り付けられた料理は
全フロアの人々が均等に分け合えば不足することはないのだが、
上の階層の人たちは、下の階層のことなんてお構いなしで
自分の食欲が満たされるまで料理を食べつくす。
なので、下の階層に与えられるのはわずかな残飯のみで
最下層ともなると僅かな食べ残しさえ与えられない。
それもそのハズ、住人たちは一ヵ月に一度、
生活する階層をランダムにシャッフルされ
前まで上の階で暮らしていた人間が突然、下の階に移動したり、
その逆になることもあり得る。
例え食糧が豊富に摂れる、上の階層にいたとしても
いつ最下層に飛ばされるかもわからない。
故に、一か月間ろくに食事を取れないとしても
餓死しないように過剰に食欲を満たす必要があるのだ。
上は欲するままに肥え、下は絶望を仰いで飢えるのみ。
このような悪循環がこの建物の構造を呪縛的に支配して、
それが改善されることは今後ない。
もう、この設定だけで200点あげちゃいたいよね。

やれ資本主義のメタファーが、やれポスト構造主義の思想が~
みたいな政治批判のニュアンスを持つ映画は他にもあると思うが、
この作品の持つ不条理さ、シュルレアリスム的映像からは
結局のところ人は独占的に欲望を使役するし、
弱き立場のものはなにも取捨選択をできないという光景が
非常に鮮烈に印象に残った。

とにかく不快だったりグロかったりする映像てんこ盛りなので
人を選ぶ作品ではあるが、舞台演劇一つ見たような
カタルシスの充足感に包まれる怪作だと個人的には思う。
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