非常に鬱屈とした気分に浸れる不条理密室スリラー。
露悪的なまでに醜悪に描かれている人間の生き様が刺さった。
主人公、ゴレンが目を覚ますと
中央に大きな四角形の穴が開いている密室に閉じ込められていた。
壁には大きく「48」の数字。
穴を見上げれば同じような密室がどこまでも続き、
下を見れば底が見えない程、同様に階層が続いている。
ここは巨大な搭の、上から数えて「48階層」であり、
唯一与えられる食事は穴から降りてくる
エレベーターに積載されている料理だけ。
このエレベーターに盛り付けられた料理は
全フロアの人々が均等に分け合えば不足することはないのだが、
上の階層の人たちは、下の階層のことなんてお構いなしで
自分の食欲が満たされるまで料理を食べつくす。
なので、下の階層に与えられるのはわずかな残飯のみで
最下層ともなると僅かな食べ残しさえ与えられない。
それもそのハズ、住人たちは一ヵ月に一度、
生活する階層をランダムにシャッフルされ
前まで上の階で暮らしていた人間が突然、下の階に移動したり、
その逆になることもあり得る。
例え食糧が豊富に摂れる、上の階層にいたとしても
いつ最下層に飛ばされるかもわからない。
故に、一か月間ろくに食事を取れないとしても
餓死しないように過剰に食欲を満たす必要があるのだ。
上は欲するままに肥え、下は絶望を仰いで飢えるのみ。
このような悪循環がこの建物の構造を呪縛的に支配して、
それが改善されることは今後ない。
もう、この設定だけで200点あげちゃいたいよね。
やれ資本主義のメタファーが、やれポスト構造主義の思想が~
みたいな政治批判のニュアンスを持つ映画は他にもあると思うが、
この作品の持つ不条理さ、シュルレアリスム的映像からは
結局のところ人は独占的に欲望を使役するし、
弱き立場のものはなにも取捨選択をできないという光景が
非常に鮮烈に印象に残った。
とにかく不快だったりグロかったりする映像てんこ盛りなので
人を選ぶ作品ではあるが、舞台演劇一つ見たような
カタルシスの充足感に包まれる怪作だと個人的には思う。