Jun潤

花束みたいな恋をしたのJun潤のレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.1
2021.01.31

「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の坂元裕二脚本の作品に有村架純が帰ってくるということで情報解禁から公開を待ち望んでいました。
そして「何者」ぶりの菅田将暉との共演、前作でも付き合っていましたが、今作では本格的に二人で恋愛模様を紡ぎ出します。

物語は奇跡的な出会いをした麦・絹、二人の男女の出会いから別れの5年間の軌跡を追ったもの。

まずはそこまで深く触れることができない、作品の中に登場するサブカルチャーの数々。
知っている単語がいくつかあったものの、そこまで造詣が深くないので作品に対する意味を鑑賞中に見出すことはできなかったのですが、観賞後に軽く調べただけでも麦と絹の関係性にマッチしているような印象を受けたので、知っている人からしたら相当良いのではないでしょうか。

そして肝心の中身。
元々有村架純目当てで見ようと思っていて、中身も純愛ものということで淡々と進んでいくものかと思いきや、演出や演技、撮影の感じがとてもよく、ストーリーや設定がシンプルだからこそ、恋という身近な感情がより深く突き刺さってきました。

序盤の二人の出会いから仲を深めていく様子は若干の生々しさもありましたが、恋をしたことがある、付き合った経験がある人の共感を呼ぶものでした。
ああ、あんな恋してたなと感傷に浸りながら観ていたので自然と涙が出てきました。笑

中盤から、終盤の別れに向け、徐々にすれ違っていく麦と絹。
麦の、仕事に責任を感じ、二人の将来を見据えて身を粉にして働く姿も、絹の、仕事や将来ではなく、今を楽しむために転職したり趣味に勤しむ姿もどちらも共感できるからこそ、二人のすれ違いはとても辛いものでしたね。

そして、二人のすれ違いを起点に、世話になった先輩、不条理な社会に対する苦言、思考のリンク、ファミレスでの会話、一緒に暮らした部屋、音楽のステレオとモノラルの違い、麦のストリートビューと、序盤にあった数々の描写が、序盤とは違う意味を持った描写となって畳みかけてくるのは、二人が付き合った4年間を観続けたからこそ、より如実に寂しさが込み上げてきました。

印象的な台詞の数々や、麦と絹の抒情詩的なモノローグが、ありふれている恋愛模様を一層特別なものに押し上げてたと思います。

4年間の変化を演じた菅田将暉、有村架純をはじめとして、脇には清原果耶岩松了戸田恵子小林薫オダギリジョーと、豪華俳優陣をこれでもかと投入していましたね。
「罪の声」の好演から日本アカデミー賞助演男優賞にもノミネートされた宇野祥平を、夜のお店に入っていく男性でちょい出ししてきたのには笑いました。笑

住む場所が変わっても、履く靴が変わっても、ストリートビューに残る2人の姿のように、一つ一つの小さくて大切な思い出が「花束みたいな恋」として、二人の記憶の中に残っていくのでしょう。
そんな恋が、したかったなぁ…。
Jun潤

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