しゃび

花束みたいな恋をしたのしゃびのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
2.0
雑誌に載ってたU-NEXTの2021年ランキングで1位だったので観た。


飽きさせない映画だった。
一方で、余白のない映画だと感じた。

「余白」とは、言い換えると「よく分からない部分」。もっと言い換えると「人それぞれ部分」だ。

余白は分かりにくい印象を与える。
100人観たら100人違うことを思うかもしれない。

この映画はそのような要素がない。
シーン、セリフ、部屋、道、眺め。全てがパズルのようにピッタリとはまっている。

主人公の家の本棚に置いてある『AKIRA』や『ピンポン』。そりゃ置いてあるだろうというラインナップ。


これをより濃縮させたのがYouTubeだ。
表情で演じて、言葉で説明して、日本語に日本語の字幕を入れて、無駄な映像はジャンプカットで削って。

とにかく早く分かりやすく。

スマホで暇を潰せるようになってから、
分かりにくいものが本当に受け入れらづらくなった。

本作のような、モノローグ多用と杓子定規な設定は現代人に合っている。

いわゆる、サブカル好き
いわゆる、男女差
いわゆる、社会人
いわゆる、好きなこと
いわゆる、出会いと別れ
いわゆる、すれ違い
いわゆる、生きづらさ

さらにお互いのモノローグで、話をフォローしているのだから、分かりにくさなど微塵もない。

モノローグは主観のように見えて、主観じゃない。恋愛ってこういうものだろ、という説明だ。


ただ。
ぼくは分かりやすい物語だけでなく、もっと人の曖昧さやぼやっとした世界を感じたい。意味を伴わないものの中に、受け取るものがあるはずだから。

ステレオタイプを身に纏わない麦と絹が見たかったな。

せっかく、いい俳優さんと女優さんを2時間も観られるのだから。


【ネタバレ】
至極王道のストーリーなのだけど、ぼくはこの手の別れを前提にした恋愛映画は好きじゃない。なぜ、別れなければいけないのかと思う。

出会いにはワクワクするし、別れには感動がある。でもぼくは、全く別れるフラグのない作品の方が好きだ。『アバウトタイム』はフラグが立たなくても、十分「愛おしい時間」だったではないか。

人は出会って別れなくたって、魅力的に映せるのだ。
しゃび

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