まりぃくりすてぃ

ミッドナイトスワンのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.1
〈お客様の声〉

133才 広島県 OL様
「ええ映画じゃのぉ。みんなええ役者さんたちじゃけえ」

33才 東京都 うるさいタイプのひと様
「苦しんでる姿・頑張ってる姿・誰かのために尽くそうとしてる姿たちに、胸がしめつけられました。音楽もまあよくて。
そしてイチカ役の服部樹咲ちゃん、友達りん役の上野鈴華ちゃん、バレエ先生役の真飛聖さん。この三人の演技と存在感が、びっくりするほど高所安定。特にりん役! それで学校屋上のイチカとりんの二人っきりシーンは、そこだけでワンコイン+消費税(550円。これ以上上げないでよね財務省ッ)の価値があったといえるぐらいに、映画魔法を熱水噴出孔的に生む揺り籠(ゆりかご)タイムでしたね!!
さて、話題の大々熱演者・つよぽんですけど、すっばらしかったです。ええ、もちろん。難役なことは初めっから誰もがわかってます。アラ探しなんかしちゃったら『じゃあ、あんたが演じてみぃ』ってことです。性同一性障碍者の話なんだから、見てて違和感あんのは当たり前。キモい瞬間と美な瞬間とどっちが多かったかとかそういうことじゃなく、シンプルに、つよぽんの横顔等々が醸しまくる情感にあたしは肩入れします。で、彼の切ない全表情と約Cカップのムネに、ワンコイン+なぜか低減税率適用(540円)の価値。わっ、ここまでで既に1000円(税別)の作品になってるッ。。(税、ジャマ!)
ただし、です。台本に説明セリフがベタッと交ざってくることが時々あって、それはバレエ先生の『変な子……』とかナギサ(つよぽん)がくどい回数言った『何でこんな体に生まれてきたの?! うっ、うっ』&『よしよし……』とかですけど、そういう言葉は要らない。監督それわかんなかったかな? そういうののせいもあって、前半と後半に計二度あったつよぽんの愁嘆場シーン(ニセの鼻水ジェル使用もあり)が大してエモくならなかったのが、ちょっと残念だったな。
結局、主演者つよぽんの、映画的憑依/テレビドラマ的熱演/単に “つよぽん” を意識させるつよぽんがつよぽんをやってる的な地さらし、という三つがちょっと斑(まだら)になってる気がした。でも、夢に出そうなぐらいに彼のインパクトがとりあえず! うん。あたしには『まく子』以来のスクリーン内の彼でしたが、毎度ドキドキする爪痕を残してくれます。いい俳優ですね。
作品としては、山に例えれば、さっき言った屋上二女子の頃からバレエ本番にかけてが尾根で、クギヅケにさせつつ(感情移入のさせ方としては)ありふれてもいたんですけど、、その尾根を過ぎてからの終盤のストーリーの乱れが、何やら新しい感じでした。性同一性障碍者への家族親族の反応とかが「今更」な時間帯に沸き上がったりと。
ありふれてない独自なルートをそんなにして工夫して辿る最終登攀への努力を買うか、それとも乱れを乱れとして裁くか、“いくつもの世界線がありえたうちの一つの結末例” という程度の強さしかなかったみたいであり、、、、すごくすごく頑張った映画なわりには、終わった時に大満足まではなかったかもです。脇役たちの何人か (実母・友母・酔客・風俗客・公園爺さんら) の言動が類型的で浅かったかも、というのも気にすれば気になっちゃう。医者のデフォルメと同僚たちと男子クラスメートたちとエキストラ群は悪くなかったです。
あと、女であるということは、化粧するとか髪伸ばすとかオネエ言葉使うとかいうことよりも、女性にとっては圧倒的にまず内臓感覚です。子宮と卵巣を持ち、子宮と卵巣にいやおうなしに縛られて生きてて、例えば毎月生理のたんびに嘔吐したりお腹下したり昏々と眠たくなっちゃう。そのへんのふだん口にしたりはしてない重みを、あたしはホルモン注射で苦しむ主人公を見てちょっとだけ『次元、違うし…』と思いました」


▼注意▼

東京都 ネタバレ様
「後半の披露宴パーティー、りんが最後にああするのはあまりにも予想通り。意外性がないよりはあったほうがいいと思うので、その行動を起こすまではそこが単に屋外ということだけ示して屋上だったというのは伏せておいたほうがよかった。むしろあたしは、何のパかわからなかったところに新郎新婦が現れたことのがビックリだったから、事件直後に披露宴がどう混乱したかを撮ってほしかったかな。飛び下り方自体は鮮やかでよかったでした。死のニオイが一番してたのはつよぽんですが、そのへん最も無臭だった女の子を天国へ墜としちゃった脚本の乱暴なクールさを、あたしは嫌いではありません」