バス行っちゃった

由宇子の天秤のバス行っちゃったのネタバレレビュー・内容・結末

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

良かったから別にいいんだけど、要素の多さが気になる、みたいな。

女子高校生と教員の自殺を追うジャーナリストの話と、生徒を妊娠させてしまった塾講師の娘としての話、さらには塾生の下半身事情の話やら、怪しげな医者とのコネクションといった小物まで重なり、それらが呼応し合ってうねりを生んではいるのだけれども、どれかひとつだけでもフィクションの嘘を強く感じさせてしまうところがあるので、さらにそれをひとりの人物に負わせてかつ本物のように見せるためには結構な質と量のディテールを積み重ねなければならないはずで、美術や演技などじゅうぶんに高い水準を叩き出していたとは思うものの、それでも少し非現実感が上回ってしまったという印象。

ただそれも、ここまでのものではないにしても誰しもが抱えて生きているであろう二律背反では割り切れない事情の世界観、この作品で言えば天秤のバランスを取っているが故の気持ち悪さを表現するにはこれくらいの大胆さでもってフィクションの伝達力を増幅させた方がいいのではないかという寓話的な判断があるのかもしれないので、欠点なのかというと微妙なところ。

でも自分としてはやっぱり、その設定による寓話性と、質感を積み上げていく描写とが少しちぐはぐに感じられてしまい、由宇子が意識を取り戻したときに「ああやっぱりな」というフィクションのウソ感の方向へとグッと傾いていってしまったので、プロミシングヤングウーマンの感想のときとは逆で、最後由宇子は動かないままで終わってしまった方が、間違いからの再起という意味合いが消えてしまうというのはあっても、腑に落ちるというか、かえって現実的な位置で話が終えられて、それまで展開されてきた、そも実質的にそれぞれの被害者などの対象者をどう扱ってきたのかという流れと相まって、劇場から持ち帰れるメッセージとして大きなものになったのかもしらんとかなんとかを偉そうに少し。

まあこんなん所詮好みの問題で、頭に書いた通り良かったは良かったのだから、全然、全然。