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子供はわかってあげないのnori8のレビュー・感想・評価

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)
4.2
会話劇が秀逸。
沖田修一監督のセンスの良さで
2時間以上の作品が
ほんのあっという間に感じる。

上白石萌歌という女優を
映画で初めて見たが
その“勘の良さ”とピュアな瞳に
惚れてしまう。

継父と実母と弟…
笑いの絶えないほのぼの家庭に
暮らす少女が夢中なのは
アニメの中の“疑似ファミリー”。

ひょんなことから
“本当の父”を探し始めるのだが
その実は新興宗教の「教祖」。

トヨエツの登場感に
思わずこれ誰⁉️と二度見する。
怪しげな「教祖」が
娘のボーイフレンドに嫉妬する
「俗人」に変化するまでの
表情の七変化が実にお見事!
この人の存在感が
作品の成功を決定付けている。

冒頭のシーンで
上白石萌歌演じるヒロイン
美波が、推しアニメの親子の絆に
心打たれ流す“ファンタジーな涙”

現実逃避しながら
どこか冷めた目で生きてきた
彼女が、奇妙な実父と
奥手なアニオタ男子との
ふれあいの果てに流すのは
とめどなくあふれる“リアルな涙”。
「何、これ?」
つぶやきながら生き生きと
微笑むその表情に息を呑んだ。

リアリティと非現実を
行ったり来たりしながら
“心がつながる”ことの
幸福感にやんわりと着地する
摩訶不思議な感動ストーリー。

脇を固める役者も
みんな一クセあって飽きさせない。
沖田監督の、人々を見つめる
優しい「目」と「間」に感服。

見終わった後もジワジワと
幸せな感覚を味わえる良作だ。
うん、もう一度見たい。
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