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Last Lover ラストラバーのohassyのレビュー・感想・評価

Last Lover ラストラバー(2020年製作の映画)
5.0
仕事仲間であり友人の岡元監督から本作のパンフレットに寄稿する名誉をいただき、がんばって書きました。
なので本作は超パワープッシュです。
1/31〜テアトル新宿にてレイトショー、よろしくお願いします!

ということでちょっと抜粋。


「『幽霊が登場する映画』というと、どうしてもトリッキーな物語を想像しがちだけれど、日本の怪談をはじめ幽霊が登場する物語は世界中に古くから残っているし、「マクベス」や「リア王」ほかシェイクスピア作品にも幾度となく登場するなど、物語にとって幽霊はどちらかといえば古典的な表現手法と言える。幽霊たちに個性の違いはあれど万国共通でこのような存在が生み出されるのは、きっと死者に馳せる想いというものに共通したものがあるからだろう。」

そう、幽霊が登場する映画です。

「OLとして働く主人公の美優と、バイトしながら売れない役者としてがんばる光希は、倹しいながらも2人にとっては完璧と言わんばかりの、絵に描いたような同棲生活を送っている。2人の生々しいジャレ具合は本当に微笑ましいけれど、カメラの前で、長回しでここまでジャレ合うのは案外大変だったのではないだろうか。まさに2人のアンサンブルで作り上げた演技なのだろう、『ロサンゼルス日本映画祭2019』での『ベストアンサンブル賞』受賞も頷ける。」

主演2人はオーディションで選ばれましたが、その時から抜群に恋人同士だったそうです。

「2人の部屋も、ちょうどいい狭さと古さ、特にキッチン周りの小物の生活感がその世界をうまく作り出していた。青系のカーテンも、本当は暗くなっちゃうから避けたほうがいいかなと老婆心ながら思うけれど、きっと美優が青好きで決めたんだろうな、とか。」

泣く泣くカットした部分。
アドリブ演技が多い同棲部屋は、どこにカメラを向けても良いように仕上げられています。
働き者のガテン系美術マン・中山さんのお仕事!

「後半になって光希は美優の元に幽霊となって現れるわけだが、単に美優の将来を心配して現れ、お涙頂戴の恋愛話に終始するだけでは無い超展開が待っているのが、本作を絶対にエンターテイメント作品として完成させようとした岡元監督の強い意志の表れだろう。過去の作品も含め、良い意味で作品に変化を加えるところは岡元作品の見所だ。」

「パラサイト」よろしくジャンルを超え始める物語、「ホラーラブストーリー」と名付けていました。

「本作は岡元監督が言うように母親への追悼を込めた作品であり、自身が「最愛の人を亡くした悲しみを乗り越え、糧にして未来に向かって進もう」という決意の表れであろう。一方で母親への追悼から紡がれた物語は、1人取り残されてしまった美優が過去から立ち直り、自立して未来に向かっていく様を描くことで女性へエールを送るかのような映画へと昇華する。」

監督のお母様は新潟で映画館を営んでいたそうで、やはり映画で追悼するしかないと、製作を始めたそう。
ところが、出来上がった作品は若い恋人たちの物語。
そこにどんな想いが込められているのか、ぜひ劇場で確かめてください!
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