岡田拓朗

ブレイブ 群青戦記の岡田拓朗のレビュー・感想・評価

ブレイブ 群青戦記(2021年製作の映画)
3.7
ブレイブー群青戦記ー

次の対戦相手、織田信長って、マジ?

まずキャッチコピーの軽さと作品の重さが全然釣り合ってなくて驚いた!
想像していた以上のバイオレンス描写のえぐみとズッシリとした重みがあった。

内容としては、いずれの部活でも強豪校である高校生が戦国時代に校舎ごとタイムスリップして、部活を通して培った知恵と肉体(運動神経)と勇気を振り絞り、仲間を助けるために奮闘していく物語。

適度な緩さのあるエンタメ作品だと思っていたら、冒頭から無慈悲に次々と人が死んでいく。
その様はゾンビ映画を観ているような怖さがあって、描写もなかなかにリアルできつい。
そこから思っていたのと違うぞと感じ、思わず身構える。
ただ、これが逆に前半でこの世界観により没入するきっかけともなったから、よかったのかもとゆくゆく感じた。

途中冗長に感じたり感動を大袈裟に表現する演出は気になったものの、中盤から後半にかけては設定を十二分に活かした適度なエンタメ性とそれを活かしながら超えていく骨太なメッセージ性、さらに生徒たちそれぞれの関係性を巡る物語と成長や変化によって進展していく物語が相まって感動が止まらない。

エンタメ性としては、戦闘シーンによって圧倒的に不利な状況である高校生側の戦略や戦術がユニークでおもしろかった!
野球、アメフト、剣道、弓道、ボクシング、空手、フェンシング、陸上、薙刀、科学とあらゆるスポーツや知能を活かした独特のアクションで、超能力やそれぞれの実力以上の能力を持っている者として描かれてなかったのもよかった。

メッセージ性としては、松平元康(のちの徳川家康)からの言葉一つ一つが三浦春馬さんから放たれることで、より重みと深みを増している。
彼が放つ言葉には魂が込もってるかのような説得力が宿っていて、『天外者』同様に役と彼がリンクしているようにも感じられた。

特に本作の中で最も伝えたいメッセージとして添えられていた「一所懸命」を、命懸けで取り組むという意味に止まらず、語源を辿りながら「大切な人を守り抜くために」をも加える意味として語られていたことが、改めてこの言葉について考えさせられもして、作品のキモにもなっているように感じた。

前半の丁寧な登場人物それぞれの特徴を押さえていく流れが、後半にちゃんと活きているから物語構成としてもよく、こんなに破天荒な設定で全然破綻せずに筋が通った作品になってるのも凄い!

そして、織田信長と豊臣秀吉と徳川家康。
誰もがこの時代には絶対に必要だったんだという彼らへの尊敬の念が込められていたのも印象的。
斬られるシーンや撃たれるシーンはあったものの、彼らがいなかったことには決してしなかった。

その中でも特に徳川家康。
『麒麟がくる』でも平和な世の中を築くために思いを同じくした明智光秀との交流が深く、結果的に争いが絶えなかった戦国時代を終結させて、200年以上も続く江戸時代の足がかりを築く功績を残した。

ただし、(諸説あるが)武士とそれ以外で明らかな区別を設けて、武士が支配する国として世を治めた点は、現在放送中の大河ドラマ『青天を衝け』にも不条理として描かれていて、江戸時代後半への流れに繋がって、そうやって少しずつ時代が変わっていき、現在に至ってるんだなと思った。

歴史を辿るタイムスリップ物はやっぱりおもしろい!

P.S.
三浦春馬さんと新田真剣佑さんは実際の関係の深さも知っているので、それと照らし合わせながら本作を観るとさらに感動が押し寄せてくる。
五代友厚と徳川家康を立て続けに三浦春馬さんが演じたのは、何か必然なんじゃないかと思うほどにどちらもリンクしていた。
若手注目キャストが多い中、新田真剣佑さんと山崎紘菜さん、渡邊圭祐さんが特によかった。
渡邊圭祐さんのダークサイドがよかっただけに、不破瑠衣のキャラ造形にはもう少し工夫が欲しかった。
岡田拓朗

岡田拓朗