nori8

星の子のnori8のレビュー・感想・評価

星の子(2020年製作の映画)
2.3
このテーマは、
さすがに大森監督をもってしても
描ききるのは無理。

受け手の想像と感受性により
普遍化できる小説と違い
映像として可視化される映画
というメディアにおいて
いわゆる社会悪とされる
「新興宗教」を真理の媒体と
するには限界がある。
そのことを思い知らされた。

たとえ、社会や道徳に背を向けても
1対1の宿命的な存在として
絶対的な価値観である親子の絆。
狂気にも似たその情念を
「Mother」で果敢に描ききった
大森監督。

今回も設定こそ違うものの
善悪や社会の通念を超えて
「信じること」とは何か?を
痛切に問うた作品。

しかしながら、ストーリー中
エゴと欺瞞に満ちた新興宗教に
何ら制裁を加えず、最後まで
まっとうな現実に引き戻らぬまま
親子の無償の愛を真理に“昇華”
させようとするのは、さすがに無理
がある。もやもやと苛立ちが
抑えきれず不快感だけが残る。

16歳の芦田愛菜の演技も
恣意的なニュアンスを拭いきれず
下馬評に反するものだった。

監督と役者のポテンシャルに
大いに期待して見ただけに
何とも残念…。
監督の次の作品に期待したい。
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