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ジョゼと虎と魚たちのRickのレビュー・感想・評価

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)
4.3
 歩くことと歩むことは、似てるようで違うもんなんやと思う。たとえ歩けてたとしても、歩めへん人がいるように、歩けんでも歩むことは出来る。きっと歩かれへんことは別種の悩みや困難を抱えやすいのやろうけども、物理的に立って歩けるかどうかは些細な問題なのかもしれん。歩かれへんのやったら押して貰えばいいし、支えて貰えばいい。逆に歩めるんやったら、歩めなくなった人に手を貸せばいい。外にいる虎を恐れて、うちに篭って動かんよりは、自分の“足”で立って歩もうとする方がよっぽど必要なこと。1人がキツかったら、2人並んで歩んでいくのも悪くない。
 原作並びに実写版は未履修なので、どのくらい改編されたものかは分からないが、アニメ映画としてはよく纏まっていたように思う。ハンディキャップが関わる恋愛ものはどうしても身構えてしまうが、「2人の世界」に始終することなく、自律と共生が描かれていた。それだけに三角関係のくだりは、ちょっと古く見えてしまったところも。
 なんばパークスやHEP、ハルカスなど、何気にアニメの聖地になりづらいところがしっかりとリアルに描かれており、懐かしい雰囲気を楽しめた。清原果耶と中川大志の演技も落ち着いたアニメ描写に馴染んでいて非常に良かった。宮本侑芽やLynn、興津和幸など脇を固める声優陣も、自然な演技を得意とする人たちであるためにバランスが良かった。Evan Callの劇伴は驚くほどにEvan Call感があって、作品全体の叙情性を際立たせている。
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